7 救出方法

 朝食後――



私達は荷馬車に乗り込んだ。今日の御者はエドモントだった。私は何となく、ジェイクと距離をおきたかったの御者台に座っていた。


「ユリアナ様、荷台にいなくてよろしいのですか?」


御者台に座るエドモントが尋ねてきた。


「ええ、いいのよ。たまに御者台に乗るのも悪くはないわ」


けれど……背後からはジェイクの刺すような視線を感じ、なんとも居心地が悪かった。


「一体何人くらいの仲間が捕らえられているのか見当も付きませね」


エドモントがポツリと言う。


「そうね。ところでエドモント。ベルンハルト家の騎士たちは処刑は免れたのかしら? 父も母も兄弟も……処刑されてしまったのは知っているけれど」


「申し訳ございません。そこまでのことは私も詳しくは知らないのです。何しろ捕らえられて地下牢に入れられてしまいましたから。他の仲間たちの詳細を一切知ることが出来ませんでした。皆無事だと良いのですが……しかし……」


その言葉には悔しさが滲み出ていた。私は彼の言葉を静かに聞いていた。

自分の仕える主と家族が処刑されるのを騎士たちが黙って見ていたとは思えない。

恐らく、激しく反発し……捕らえられて処刑された騎士たちが大勢いたに違いない。


せめて、半数近くは生き残っていてもらいたいけれども……


「ユリアナ」


その時、突然背後から名前を呼ばれてドキリとした。私を呼んだのはジェイクだからだ。


「何でしょう? ジェイクさん」


「今、ラルフとも話し合っていたのだけれども……もし仲間が牢屋に捕らえられているとして、どうやって助け出すつもりなんだ?」


ジェイクが尋ねてきた。すると、ベルモントが不敵に笑った。


「そのときは強硬手段に出るしか無いでしょう?」


「強硬手段……一体それはどういうことなの?」


「つまり、脅迫するということですよ。まぁ、そういうことにならないのを祈りますがね」


「あまり過激なことはしないようにしてくださいよ?」


ラルフが心配そうに言う。


「ええ。私もそう思うけど……でもときには強硬手段も必要かもしれないわ」


「「「え?!」」」」


私の言葉に、全員が目を見開いたのは言うまでもなかった。



 やがて、馬車は町を抜け……ついに目的地である刑務所へと辿り着いた。



石造りの頑丈な建物はまるで敵の侵入を防ぐ要塞のように見える。すると、ジェイクも私と同様のことを考えたのだろう。


「これが刑務所……まるで要塞のようだ」


「ジェイクさん、要塞を知っているのですか?」


ジェイクの何気ない言葉に、ラルフが尋ねる。


「あ、ああ。戦争が始まった直後、戦火を逃れる為に別の土地へ移動するときに一度だけ近くを通ったことがあってね」


妙に詳しく説明するジェイクの言葉はまるで何かをごまかすかのように聞こえてしまうのは……気のせいだろうか?


「まずは入り口を探そう」


手綱を握りしめたエドモントは建物に沿って、荷馬車を走らせ……ついに大きな鉄の扉で出来た入り口を発見した――


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