23 共同作業
二人が戻ってくる間、私とジェイクは隠れ家の中を見て回った。
それは馬と荷馬車を手に入れるための資金を作るため、なにか売り物になりそうなものが無いか探すためであった。
「これなんか、売れないかしら」
私は棚の上にあったホコリの被った食器を手に取った。
「う〜ん……食器か……」
「この食器は一流職人が手掛けた食器です。かなり貴重な品物なのですけど」
「けどな……戦争が始まってからは貴族たちは平和な国へと逃げていってしまった。今この国に残っているのは貧しい者達だけだ。そんな彼らがこの食器の価値を分かるかどうか……」
ジェイクは私が手にしている皿をじっと見つめる。
「ジェイクさん……もしかして、この食器のこと御存知なのですか?」
「え? いや。知らないよ。ただ、今ユリアナが一流職人が手掛けた貴重な品だと言ったからさ」
「……そうだったのですか」
「やはり、今一番皆が必要としているのは武器じゃないか?」
「武器……」
確かに、この隠れ家には様々な武器、防具が大量に保管されている。
けれど……
「もちろん、分かっているさ。武器、防具はこれからの戦いに備えて必需品だということは。だけど、これならどうだ?」
ジェイクは壁に掛けてあるダガーを手に取ると、柄の部分を指した。
「この装飾飾りの宝石は値打ちがある。現に、エドモントが自分のダガーを見せたらあの男の目の色が変わっただろう? こんな世の中でも貴金属や宝石類は価値があるのさ」
「だけど、武器を手放すわけには……」
ここにある武器、防具はいずれ集まる仲間たちにとっては絶対に欠かすことの出来ないものだ。手放すわけにはいかない。
「何、大丈夫。別に手放す必要はないさ。要はこの飾りだけを外して売ればいいんだから」
「え? 外す……」
「ああ。この小さな飾りなら外せるだろう」
ジェイクは小指の爪ほどの小さな石を指さした。
「これを外すのですか?」
「そうだよ、試しに外してみてもいいかな?」
「ええ。どうぞ」
「なら、ちょっと荷物を取ってくるよ」
そう言うと、ジェイクは席を立って一旦あてがわれた部屋へと戻った。
「お待たせ」
次に戻ってきたときには麻袋を手にしていた。
「これはあの家を出た時に持ってきた荷物さ」
ジェイクは麻袋の紐を解くと、見たことのない棒のようなものを取り出した。
「これはバールと言って、大工道具のひとつなんだけどね」
そしてジェイクは私の見ている前で、装飾の出っ張り部分を挟むようにバールをあてがうと、力を入れて押し上げた。
すると、飾り宝石が柄から引き抜かれた。
「あ! 宝石が取れたわ!」
「これには、ちょっとしたコツがあるんだけどね。このバールに挟める大きさのものなら外せる。大量に集めれば、資金を集められるんじゃないのかい?」
「ええ、そうですね。いいです、私はベルモント家の人間です。ジェイクさん、引き抜ける宝石は全て取り除いてもらってもいいですか?」
「もちろんだよ」
こうして私とジェイクは二人が戻ってくるまで、作業を続けた――
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