20 マスターの要求
「なる程……なかなか興味深い話ですな。それではお前さんたちは犯罪者ではないということか?」
いつしか、マスターは不敵な笑みを浮かべていた。
「ああ、そうだ。どうだ、マスター。あんたなら牢屋が何処に点在しているか知っているんだろう? なんと言ってもあんたは『ウィスタリア』地区のギルドマスターなんだからな」
エドモントの言葉に私は驚いた。まさか目の前にいるマスターが、無法地帯と化した『ウィスタリア』のギルドマスターだったなんて。
一方、目の前のマスターはじっとエドモントを凝視していたが……やがて口を開いた。
「……知っていたのか? 俺の正体を」
「ああ。だからここに来たんだ。……頼む、力を貸してくれ」
エドモントが頭を下げた。私達も彼にならって頭を下げる。
すると……
「別に助けになってもいいが……ただではなぁ……虫が良すぎるとは思わないか? ただで情報をもらおうなんてどれだけ世間知らずなんだ?」
不敵に笑うギルドマスター。
「何だって?」
すると今迄黙ってことの成り行きを見守っていたラルフが殺気走った態度になる。
「……落ち着け」
そこをジェイクが止め、ギルドマスターに視線を移した。
「何が望みだ? 金か?」
「金か……だが、今の御時世は金はあまり意味がない。実はな、最近アルコールの取締が厳しくなって、なかなか流通しなくなっているんだ。酒を作るにしても戦火の中ではなかなか難しい。……言ってる意味が分かるか?」
「つまり、俺たちに酒を手に入れて来いということか?」
ジェイクは言葉を続ける。
「ああ、そういうことだ。そうだな、樽二本分のワインで手を打とうか?」
ギルドマスターは指を二本立てると私達を見渡した――
****
「どうするんだ? ギルドマスターは俺たちにワインを持ってくるように言っているが……」
酒場を出ると、ジェイクが私達を見渡した。
「それなら大丈夫、問題はない」
エドモントが歩きながら答える。
「まさか、エドモント……」
私の言葉に彼は頷いた。
「はい、そうです。ユリアナ様。あの隠れ家にはまだワインが残されています。幸いあの隠れ家はワインを貯蔵するのに最適な温度です。早速隠れ家に戻ったら調べてみようと思うのですが……もし大丈夫であれば渡してもよろしいですか?」
エドモントが申し訳無さそうに尋ねてくる。
「ええ、私の方は構わないわ。昔の仲間達を捜し出すほうが大事だもの。ラルフもそれでいいかしら?」
私はラルフを見た。
「ええ、もちろんです。あのワインはベルンハルト家のものですから、ユリアナ様におまかせします」
「ありがとう、それでは隠れ家に戻ったらすぐに確認しましょう」
「だが、今度は運ぶとなると荷馬車が必要になるが……どうするんだ?」
ジェイクが私達に尋ねてきた。
「そうだな。ではまずは荷馬車を手に入れよう」
そして私達は荷馬車を求めて町を探索することにした――
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