1時間以内で仕上げた作品

泡沫 知希(うたかた ともき)

君といれば笑えたはずなのに

僕らは平凡だった。


漫画のように美しい彼女を持っている訳でもなく、スポーツが得意ではない。


もしこの世界に主人公がいるならば、それにはなれない。


多分、クラスメイトABになっているだろう。誰も僕らのことを覚えているわけがないし、主要なキャラに近づくことさえできない。






でも、僕らには少しだけ違ったことがあった。


僕らは、同性のカップルだった。

最近では世界的に広がっているが、まだまだ偏見の多い。いじめられる対象になるだろう。

それを隠して僕らは生きている。誰にも伝えることが出来なかったが、それでも幸せだった。

帰り道、こっそりと手をつなぐだけで、一緒にいられるだけで、毎日が華やかに染まっていたんだ。

君の笑顔を見るだけで、元気がもらえていたんだ。

主人公になれなくても、幸せは掴める。それを実感できて、心が震えていた。


「僕は幸せだ。君と一緒になれて、君と出会うことができて、それだけで世界は変わってくる。これから先もずっと君といたい」


とね。そうすれば君はどんな顔をするだろろか。

笑ってくれるのかな、恥ずかしがるのかな、と考えるだけでも心に暖かいものが貯まるのだ。






そんな幸せを噛みしめて過ごしていた矢先、僕らが付き合っていたのが周りになれてしまった。そのせいで、いじめられるようになった。


君は笑わなくなった。


君を笑わせるために僕はどうしたらいいのだろうか?




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