第2話 世知辛い。この世の中
そして、あれから40年。
各国は、自業自得だが、食料生産に必死の状況。
人間が大量に減ったため何とかなっているが、復旧に、金も時間も回せず。
そして学生は。
僕もそうだったが、18歳まで学生は、自宅待機兵予備隊という肩書きを持つことになる。まあ、通称自宅守備隊とも呼ばれている。
これは戦後。治安の悪化により、通学時のリスクを、下げるためとも言われている。
有事の時には、命令が端末に来て、有無を言わさず出撃が必要だが、この40年程度。そんなことは発生していない。
それと、昔はなかった国民の義務。
国民16歳以上。全員参加の国民審議。
そう。政治への全員参加。
加害者、被害者の名前は出ないが、それ以外は情報として公開される。
それを読み、審議し判断を下す。
そのため、国には議員などは存在しない。
三権独立は別の形。権力の細分化で分けられた。
ああ、そうだな。立法、行政、司法は半分を国というか、軍が持っている。
でも実行と布告部分のみ。
判断は国民が行う。
判断に伴う、責任を背負って。
だが例外はある、拒否ができるのは、自身や家族に関わる問題と、本人が意識不明の重体。それと、受刑中。つまり今の僕。無論義務が停止中は、国民としての権利も停止される。
この全員参加型民主主義政治制度は、戦争に巻き込まれた責任を、停戦時に当時の政治家達に民衆が問うた事により、決められた。
このとき。むきになった旧政治家により、投票結果を実行し。結果が悪ければ賛成者全員に罰則が来る。まあ、意趣返し。人間なのに、ミスが認められない世界。その苦しみを理解しろ。多分そんな思い。
成熟してきたAIを利用し、リアルタイムでの国民の採点が、おまけとして採用され絶えず行動は、位置情報くらいだが、モニターされている。
違反をすれば、違反ポイントが加算され、善行をすれば、善行のポイントが加算される。
差がマイナスになれば、懲役も与えられる事がある。
完全なる、監視社会。
僕は、労働役中のため、権利も無いが義務も無い。
そこは、素晴らしい。
本当に、国民審議は面倒だ。
端末に通知が知らされる。多いときは、1日に幾度も。
『本日の提議問題。日本国 地方通達-第○○○号。○○県○○市○○町において。…………多数の場合。再審議となります』
この通知は、国民審議。
投票し、投票結果を実行。
結果が悪ければ、賛成者全員に罰則が来る。
罰則は、罰金や懲役に変わる労働役。
紛争地の、再開発地区へ行かされる。
最短3ヶ月から20年。3ヶ月未満は基本罰金刑。
20年以上は、どうなるのか知らない。
一説によると経費削減のため死刑か、戦地送りというのが、まことしやかに噂されている。
死刑と言えば、過去に一度。死刑を廃止し、無期にしろと議題が上がった事がある。
見事。死刑囚の無期化が決定。
だが、対象人物の食事代や光熱費。そして、管理用人件費その他諸々が、受刑者が死ぬまで、賛成者から天引きされ始めた。
施設建設費から、人件費を含む管理費まで含めると、かなり負担は大きく。馬鹿にならない。
意外と早く再審議となった。
加害者が死刑になる場合。
もし間違っていたら、関わった捜査関係者に罰則と、遺族への賠償が課せられる。
そのため、経費的差額を計算すると、死刑の方が安い。
この世界の仕組みにより。
死刑により発生する、危惧されていた問題もなくなった。
直接的罰則が怖いのか、確実な犯人でなければ。死刑にならなくなった。
つまり誤認逮捕。その物が無くなった。
国中に、基本カメラが張り巡らされ、外にはプライベートなど存在しない世界。
端末を持っていない者が、カメラにより認識された場合。
警報が鳴り響き。すぐに逮捕。
生体マーカーでチェックをして、国民でなければ、国外退去が待っている。
端末を忘れた国民であれば、そのチェックに関わる経費が罰金となり、天引きされる。
多少目は粗くなるが、山間部でも同じ。当然海岸でも。
つまり、端末を持っていない人間は、この国の中で身動きすらできない。
こんな世の中。
サービスなどという便利な言葉は、なくなった。
すべてにおいて、何かをうければ、それに関わる経費は、利用者が負担することに成る。
川の流域に住めば、治水に必要な河川危険対策費が引かれ、水道維持経費が引かれる。
つまり、なんとか税などと言う曖昧な物は無くなり。直接的な経費として請求される。
県民で割っていた物は、直接関わる人のみが、負担することになる。
道路も移動経路に応じて利用料。
そのため、人通りのない道路は整備されず。時間の流れの中で消えていく。当然道中の整備部分など費用負担が出来ず。山間の集落も消えた。
まあ。そんな世知辛い世界。
だが物事を明確にしろと、望んだのも国民。
国はそれに従った。
さて、現在、俺は服役中? いや、労働役。
当然権利は停止されている。
罪状は、ご禁制のヤバイ物を持っていたから。
いや持っていたのは、確かなんだけどね。
理由も何も関係なし。
持ってた。逮捕。そら、行けぇという感じで、ここへ送られ、復旧という名の作業が始まる。
この、秋津国では基本システムの問題で、同級生などはいない。
同世代に会うのは、親の知り合いが、家に子供を連れてきたとき。またはその逆。
必然的に、会う回数は少ないが、幼馴染みのみ。
そんな希有な存在で、異性。
大事だと思っていた存在に、俺は売られ。ここへ来た。
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