第18話
ギャーギャー煩いダイスケを押し倒して後ろ手にすると、ボディバッグに入れて持ってきた長いケーブルタイを引っ張り出して両手首のところで結束する。
拘束完了。
煩い口にも猿轡を嵌めたいところだけと生憎と持ち合わせに手頃なものがない。諦める。
「さてミナミ、ミユキはどこだ?」
「し、知らないわよ! あんなズベタのことなんて」
「……おまえにミユキのことを蔑む権利はないぞ。おまえこそ淫乱売女のズベタ糞女だろうが」
「う、うるさい! うるさい! うるさい! あんな女よりウチの方がカズヒトに相応しいのっ」
「……」
「ね? ベッドきれいでしょ? エアベッド持ってきて用意したんだよ。カズヒトのためだよ? ね? あの女は放っておいてウチとシよ?」
こいつ冗談とか誤魔化しでこんなことを言っているわけじゃない。本気で俺が自分と交わることが正当だと思っている。
長い付き合いの幼馴染が故に嘘か嘘じゃないかが分かってしまう。
「おまえ、ほんとうにいかれちまったのか?」
「そんなことないよぉー‼ お医者さんだっておくすり飲んで暫く休んだら良くなるって言ったもん」
「ヤブ……」
「えへへへ……」
ミナミは微笑みだすと、着ていた服を躊躇なく脱ぎ始める。あっという間に下着姿の出来上がり。
「っ! もういい。自分で探す」
「ええっ、待ってよカズヒト!」
ミナミの呼びかけは無視してパーテーションを抜けて扉も出る。
あれはもう放っておくに限る。もはや狂っている……。
八つ目のトビラもまた書庫。
残すは廊下のどん突きにあるちょっと立派に見えるトビラのみ。工場長室とホコリを被ったネームプレートが貼ってある。
ノブを掴みそのまま扉を開ける。あのバカ二人組ではもう神算鬼謀なことは考えつかないだろうからあとはもう一刻も早くミユキを見つけるだけ。
六メートル四方ぐらいの部屋に古びた応接セットが隅の方に一組、スチール机が三台。座面が破れたオフィス椅子が数脚。
「いない?」
ここが最後の部屋なのでこの部屋にいると思うのだが……。
いた。
応接セットの長椅子に両手足をぞんざいに縛られて寝転がされているミユキを発見した。着衣に乱れは……ない。ひとまずは安心していいだろう。
「ミユキ、ミユキ? 大丈夫か⁉」
手足の縄と口に噛ませてあったタオルを外す。意識がない……眠っている?
「おいっ、ミユキ。起きろっ‼ 助けに来たぞ⁉」
「ふにゅ……ん……ううん……」
「呑気に寝ている場合じゃないんだが?」
「ふぁぁぁあ。ん? あれ? ……ここどこ? あれ? カズヒト? あれ?」
どうも意識が朦朧としているようだ。薬でも盛られたか?
「しょうがない。おぶって行くか」
ミユキを背負い、右手に懐中電灯左手にミユキのバッグを持って工場長室を出る。
「ふへへへ、カズヒトのいい匂いだ……」
呑気なもんだ。
※※※
ミユキを無事に発見。一服盛られた模様……ヤブ医者の処方した薬か?
ここまで来たらまだ★をつけていない方は少ないでしょうが(?)まだな方がいらっしゃいましたら忘れずに★お願いします!
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