第39話 ドハとロア!




 実はロアには人に言えない辛い!辛い!過去がある。また韓国人ではなく北朝鮮人だった。


 政治犯の汚名を着せられた夫のせいで、北朝鮮収容所に収容されていたのだが、ある人物の手助けにより脱北して現在は韓国に住んでいる。


 1995年に金星日体制下の北朝鮮で平和に暮らしていた『ロアの家族』だが、ある時、夫ゴヌが政治犯の疑いで逮捕され、母子は強制収容所に入れられてしまった。


 あの幸子を散々玩具にした挙句、金儲けの道具にした最低の男、イケメンジゴロ、ドハは1994年に、日本での功績を認められて北朝鮮に戻って、以前から在籍中だった秘密警察(国家保衛省)に所属。


 そこで幹部に祭り上げられていた。


 1995年極寒の2月に、政治犯の家族として収容されて来たロアと、ここで出会う事になる。それでもロアもよくドハの言いなりになったものだ。


 夫は目の前で残酷に処刑され、更には可愛い娘リアまでドハの暴力と虐待で命を失ったと言うのに……。


 当然逆らう事は死を意味するから逆らえないのは分かる。だが、いくら何でも愛人関係になるのは行き過ぎ。


 一体何故?


 今まで泥棒を企てたり逃走しようとした子供達は、こんな事をしたらどんな目に合うのか、見せしめとして酷い暴力と虐待で命を落としていた。

 

 そんな子供たちは、数えきれないほどいる。だから…ロアの娘リアだけを手加減する訳にも行かない。


 本当だったら暴力を振るう係員は部下がやるのが建前なのだが、リアはドハによって暴力を振るわれた。


 それはもう二度とロアの悲しむ姿を見たくないからなのだ。そこでコッソリ誰も居ない所に、ロアを呼び出した。


「リアちゃんが収容所の共同倉庫から、じゃが芋を盗んで食べたらしいじゃないか?1人だけが秩序を破る事は許されない!」


「ワァ~~ン😭ワァワァ~~ン😭お許し下さい!どうか……どうか……グウウウウ( ノД`)シクシク…」


 ドハはロアのあまりの嘆き様に、うかつにも職務を忘れて立ち上がり優しく肩を抱き寄せ「大丈夫だよ!明日は俺が暴力係を担当するから、だからリアちゃんに暴力を振るわれて倒れる演技をして欲しい。分かったか?」


 皆の手前リアだけ特別扱いは出来ない。散々殴ったフリをしたのだった。

 そしてリアはその場で倒れた。


『リアは散々暴力を振るわれたが、何とか親の介抱で助かった!』

 収容所の人々はそう思っている。


 本当はこの収容所の幹部ドハが手加減した為に、大事には至らなかったのだ。


 ドハはジゴロ男で、女を只の利用する為の道具にしか考えない、冷たい男と思っているだろうが、ドハが本当に愛した女は実はロアだけなのだ。


 夫ゴヌを目の前で残酷非道な殺され方をしたロアの嘆きの、痛々しさは見ていられない程だった。


 あの処刑はドハの役目では無かったのだが、係員に引きずられ無理矢理最前列に立たされて、狂わんばかりに泣くあの姿を見て、今すぐ飛んで行って支えてやりたい、抱きしめてやりたい、強くそう思ったドハ。


 ドハは何故そのように思ったのか?


 それは幼くして失った、若かりし母に生き写しのロアだったからなのだ。幼少の頃に母を失い、その悲しみが余りにも大き過ぎて、恋愛に億劫になっていたドハ。


 あんなに愛した母を、列車事故で一瞬にして亡くした悲しみは、いかばかりだった事か?


 かなりの歳月が過ぎたにも拘らず、まだあの悲劇から立ち直っていないドハ。


 その為、女性を真剣に愛する事を避け、ただの仕事の道具と欲望を満たす道具ぐらいにしか思わないようにしている。心のどこかに今尚、母を追い求めているドハ。


 昨日まであんなに元気だった母を一瞬で失った悲しみ。まだ6歳のドハには受け入れがたい現実だったのだ。6歳で母を失ったドハは今尚、母の幻覚を見るのだ。


 愛に餓え切って枯渇寸前のドハの前に、6歳で失った母と瓜二つのロアが現れ、やっと夢にまで見た母に会えた。余りの嬉しさに、今夫ゴヌを目の前で残酷に射殺される悲劇の女性だと知りながらも……。


 それとは反対に、やっと死んだ筈の母に会えた喜びで、仕事を忘れて今この場で飛び上がりたい。胸の鼓動を抑える事が出来なかったドハ。


 更にはロアはこの収容所では、何をやらせても群を抜いて優秀。


 そして…ロアがこの収容所に来て早3ヶ月が経ったある日の事、ここでは、定期的に幹部の定期見回りがある。


 そこで強制収容所でのロアの仕事ぶりに驚かされる事となった。更には…非常に人間関係を築く事にも長けている。


 そして…次の定期見回りでも、やはり手先が器用で、手際よく働く姿、要領の良さには目を見張るものが有った。また事務をやらせても長けているロアを、いつしか真剣に愛するようになったドハ。


 ドハは何かと理由を付けて、ロアを自分だけの仕事部屋に呼び付けている。それでも……そんな事をしたらみんなに2人の関係を疑われるのでは……?



 いえいえロアは班のリーダ-だから全く気付かれない。連絡事項はリーダ-が受け取る役目だから……やがて2人は男女の関係になって行った。



 ◆▽◆

 ある日ロアがドハに呼び出されてドハの幹部室に出向くと「ここに座りたまえ!」


 ソファーに促されるままに座った。すると””カチャ””と部屋に施錠を掛けたドハ。


「俺の気持ち分かっているだろう?俺は……俺は……」そして唇💋*。・を奪った。


 ロアもいつの間にか、自分たちの窮地を救ってくれる。この美しい男に完全に信頼以上の熱い恋心が芽生えていた。負けずと求めに応じて、身体をドハに預けた。



 2人は人の目を盗んでほんの短い時間でも求め合っている。


 それは……たとえ数分しか無くても欲望のままに求め合い*⋆*💋・*♥。絡み合って✧💛*・


 まぁ40代の脂の乗り切った2人だから我慢が出来ない。


 そして……やがて愛するロアを脱北させようと目論む。


(自分の女となって外の世界で働かせなければ、あんな優秀な女をこんな所で腐らせる訳にはいかない。ロアを韓国で働かせよう……)


 韓国で輸入雑貨商社を開いて5年にもなるのに、一向に目が出ないその会社で働かせようと画策した。


 どういう事かというと、背乗り(成り済まし)として韓国人のロアと言う人物に成り済まして韓国で輸入雑貨商社の社長として働かせる事だったのだ。


 こうしてパク・ゴヌの妻で(パク・ソユン)は、ロアとして生きて行く事になる。


 韓国での輸入雑貨商社は、もうかれこれ会社を立ち上げて5年にもなるが、売り上げに苦戦している。


 そこで目を付けたのがロアをそこに送り込んで、苦戦している事業を立て直してもらいたい。次期社長も念頭に置いて売り上げの拡大を目論んだ。



 そしてこの収容所から脱北させた。まぁ?この収容所のトップだから何とかなる。


 そしてロアはその才能を遺憾なく発揮して行った。


 その目論見は見事に成功。


 その思いに応えるように売り上げも伸びて行った。


 そして……そのノウハウを日本の輸入雑貨リンリンにも取り入れて行った。


 ミノと幸子の経営するリンリンも売り上げに苦戦していたが、ロアのおかげで急成長して行った。





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