　スホの真実が断片的に分かって来た。

　スホの実母久美子は、日本の名門国立大学教授とドイツ系アメリカ人女性の間に、誕生した生粋のお嬢様。

　父親の井上徹（イ・ミンス）は、大韓帝国の最後の皇太子（イ・ジホ）と日本から嫁いできた有本宮守正王の長女の華子妃との間に1910年に誕生した王子だった。

　井上徹は日本統治下だったので、日本の祖父母宅で教育を受けた。

　学習院大学で教育を受けた後、アメリカのハーバ－ド大学教育学部を卒業し、ドイツ系アメリカ人女性と結婚してスホの母親久美子が誕生した。もう兄は居たが、どうしても女の子が欲しかった両親は、高齢で久美子を出産した。

　初夏の澄んだ空気と森林の香り、岩壁のあちこちから白糸のように流れ落ちる流水カーテン。そんな何とも美しい季節の1960年7月に久美子は誕生した。

　そんな……ハ－フの久美子は、幼少の頃から非常に美しい近所でも評判のお嬢様だった。

(1910年－1998年）丁度その頃、北朝鮮の建国者「偉大なる指導者」金日高の世継ぎ。(1942年-2012年）金星日のお妃候補として日本の久美子に白羽の矢が立った。

　1945年8月、第二次世界大戦の終結により、日本の植民地支配が終わった朝鮮は、戦後世界の米ソ冷戦が続いた事によって、48年に大韓民国と北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)に分断された。

　1950年からは朝鮮戦争勃発、双方に多くの犠牲者が出た。1953年休戦（終戦ではない）となって北緯３８度線で対峙する形となった。

　父親の井上徹（イ・ミンス）は大韓帝国の最後の皇太子（イ・ジホ）と、日本から嫁いできた有本宮守正王の長女の華子妃との間に1910年に誕生した王子だった。

　だから…スホの母久美子は大韓帝国皇帝の末柄で、北朝鮮次期王星日に見初められ、強引に側室として北朝鮮（朝鮮民主主義人民共和国)に拉致された。

　だが、その時既に、公務員の井上久美子1982年（昭和57年）当時22歳は、3歳上の職場の同僚で大蔵省のエリ－ト加藤雅之と、交際中で結婚も視野に交際していたので全くその気はなかった。

　そんなある日、新潟県柏崎市で拉致された。

「ちょっと出かけてくる。すぐ帰る。」と言って外出したまま消息不明になってしまった。

　のちに分かったのだが、実行犯は北朝鮮工作員、オ・スンチョルと言う男だった。

　実は金星日は最初から妃には久美子しかいないと決めていた。

　それだけ惚れ込んでいたのだった。そして北朝鮮工作員達よって拉致された。

　だが、その当時金星日は40歳、既に正室がいたので、側室として拉致された。

　久美子はその時既に4ヶ月の身重の身。お腹の中に居たのがスホなのだ。もう直ぐ5ヶ月、中絶も出来ない身の上。

　それを知った王子の金星日は、「俺の仇と如何わしい行為の挙句に出来た不義の子など汚らわしい。産まれて直ぐに焼き殺せ！」久美子は必死だ。

「それだけは止めて下さい！そんな事をするのだったら今すぐ舌を嚙み切って死にます！」

　愛する久美子を死なせたくないばかりに、３歳までは母の下で生活出来たのだが、久美子が星日との子供を身籠った為に、スホに命の危機が迫っている。

「この国に王子は2人要らない！腹違いの子供など争いの元、いつ反逆するか分からない。今度こそ殺せ————！」

　それを知った久美子は、いつ愛するスホが殺されるかもしれないと思い、ある夜家来に「この子を日本に工作船でコッソリ逃がしてやってください！」

　だが……バレてしまい大変な事になった。

　それを知った星日が、スホの目の前で家来に母久美子を粛清の名の元に、殴られ半殺しの目に合っている。

「ギャッギャ————！オンマ！ワァ～～～ン😭ワァワァ～～ン😭ワァワァ～～ン😭オンマワァ～～～ン😭」

　気も狂わんばかりに泣き叫ぶスホ。

　そればかりか、スホは母と引き離され、まだ3歳の赤子をまるでゴミくずでも捨てるかのように森に投げ捨てられた。

「ワァワァ～～ン😭ワァワァ～～ン😭オンマ！ワァ～～～ン😭オンマ！ワァ～～～ン😭」

　愛する母と僅か３歳で無理矢理引き裂かれ、こんな物騒な森の中にいたいけな幼児を、いつ野犬や野獣に食い殺されるかも知れない。

　いつ襲われるかもしれない怖さと、母と引き離された寂しさに加え、もう二度と会う事も叶わない思慕で涙も枯れ果てるほど泣き尽くし、やがて疲れ切って眠りに付いた。それ以来幼少期の記憶は全く無くなってしまった。

【李氏朝鮮（りしちょうせん）は、1392年から1897年（大韓帝国として1910年まで存続）にかけて朝鮮半島に存在した国家。王朝名としては李朝（りちょう）。「李氏朝鮮」は「李家支配下の朝鮮」の意味であり、過去に「朝鮮」の国号を使用した箕子朝鮮や衛氏朝鮮などとの区別のため呼称される。大韓民国では「朝鮮王朝」（朝鮮語: 조선왕조）とも呼ばれ、近年の日本でも同様に呼称する場合がある。なお、北朝鮮では朝鮮封建王朝（조선봉건왕조）と呼ばれる。高麗の次の王朝にあたり、朝鮮の歴史における最後の統一王朝である】