異世界から来た聖女
あれから数日後、私たちは馬車に乗り沙羅の住む
屋敷に向かっていた。
あの日、沙羅に手紙を書いた。
話したい事があるので伺いますと言う事と、謝罪の言葉を綴って。
正直に言うと不安だらけだった。
もし、沙羅に拒絶されたらと思うと怖くて仕方なかった。
でも、聖女の役目を果たさなければと思った。
例えそれがどんな結末になろうとも。
***
しばらくすると、大きな門の前に辿り着いた。
そこには、おそらく執事だろうと思われる男性とメイドであろう女性がいた。
私達が近づくと、男性は深々と頭を下げ挨拶をした。
メイドの女性もその男性と同じように頭を下げたので
、私達もそれに倣って軽く頭を下げる。
「お待ちしておりました。ルカ様にルーク様」
「お忙しいところお時間を作っていただき誠にありがとうございます」
「いえ、とんでもないです。お嬢様も楽しみにお待ちになっておりますのでどうぞこちらへ」
そう言われ、私達は男性の後ろをついて行った。
しばらく歩くと、玄関ホールへと着いた。
そこは広く豪華絢爛という言葉が似合う場所であった。
私達はその中を歩きながら奥の部屋へと向かう。
扉の前に着くと男性がノックをして、失礼しますと言い扉を開ける。
中にはソファーに座る沙羅の姿があった。
沙羅は私達に気付くと立ち上がり、駆け足で近づいてきた。
「…………!!」
「えっと……どうしましょう何を言っているのか分かりません……」
沙羅様は、私に何か伝えようと一生懸命に話しているけれど、沙羅様の言葉は聞いたことの無い言葉だった。
それはそうだ、だって沙羅様は別の世界から来たんだもの……
これでは、沙羅様も困るだろうと私は沙羅様の手を握って、ぽう……と魔力を込める。
チラッと沙羅様の方を見ると不安そうな表情を浮かべていたので、私は大丈夫、と言うようににっこり笑って見せた。
すると、沙羅様も安心したのか笑顔を向けてくれた。
「…………っ、あ……の……」
「沙羅様、私の言葉が分かりますか……?」
「……はい!、えっ!すごい……これ貴方がやったの?」
「えぇ、これでもう大丈夫ですわ」
「へ~~ここが異世界だってのは分かってたけど言葉通じなくて困ってたんだよね~」
「ちょっと!沙羅様!!聖女様になんて口を……申し訳ありません聖女様……」
真っ青な顔をしながら、沙羅様の隣にいたメイドさんが謝ってきたけれど
私は気にしていないと言って、なんとかその場は収まった。
それから私達は、向かい合って座り自己紹介をする。
「私はルカ、この国で聖女をしております。こちらは私の婚約者のルーク様です」
「ルークです、これからよろしくお願いいたします」
「はわぁ……聖女ってほんとにいたんだ……あっ!私は高木沙羅です!一応女子高生してます!」
そう言って、元気いっぱいに挨拶する沙羅様が眩しくて思わず目を細めてしまう。
沙羅様は、とても可愛らしい方だった、それに、すごく素直な人だと私は思った。
きっと、私とは違う世界で生きてきた人だからなんだろうと 思っていると、沙羅様が口を開いた。
「あのー私なんでここに呼ばれたんでしょう?」
「それは……貴方が聖女として選ばれたからですわ」
「聖女に?でも、ルカさんがいるんだし必要ないんじゃない?」
「あら、そんな事はないわ。この世界に呼ばれたって事は何か特別な力があるって事だもの」
「そうなのかな……あっ!あと、私がこっちに来た時になんかイケメンの人に何か言われたんだけど……何だったんだろ……」
「あぁ……それは多分アルマ様ね……それはそのうち説明してあげるわそれより私がここに来たのは、聖女として
貴方が相応しいか見極めに来たのだけれど……心配いらなかったみたいね」
そう言って、沙羅様の顔を見る。
沙羅様は、キョトンとした顔をして首を傾げていた。
「でも、今日の事はアルマ様には内緒にしておいてくれる?」
「え?わかりました…」
「よろしくね、さて……ルーク様そろそろお暇致しましょ」
私はそう言い、席を立つ。
ルーク様も同じように立ち上がったのを確認してから 私は沙羅様の方を向く。
「これから大変かもしれないけれど、頑張ってね」
そう、一言残して部屋を出た。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます