第32話 『秋月』王都進出
ナヴァール公の紹介もあって私は貴族街に
カサンラカとは違い物販、食事処、宿泊は別にしてある。立地も大通りに面した場所を抑えた。
とはいえ、人材がいないのでナヴァール公に貴族の次男、次女以下の子息・子女に声を掛けて貰うようにお願いした。
月給は金貨20枚である。高位貴族の侍女でも金貨15枚あれば良い方だ。近衛騎士でやっと金貨20枚だから好待遇と言えるだろう。売上によって手当も付くし、この世界ではカサンラカが初試みであった福利厚生を盛り込んである。そうした事もあって応募者が殺到した。
面接では解析鑑定で虚言を見抜き、武に優れている者は護衛として、知に優れている者は事務職に取り立て、コミュニケーション能力が高い者は接客業へと回した。
食事処は料理が出来ない者が多いので、料理スキルを持つ奴隷を購入してキッチンに立たせる事にした。
武に優れている者達とパーティを組み、私は王都のダンジョンに潜ってブードキャンプを行った。何故かって?私の経験値倍化は組んだパーティにも適応される。それにある程度自衛が出来なければ強盗に遭うかもしれない。
レベル15前後だった者達は今では立派にレベル50を超える猛者となった。ダンジョンのドロップ品は私が6割、4割は社員達の物として分配した。士気が上がったのは言うまでもない。
次は販売員や宿泊施設の職員、ホールスタッフの育成である。転移でカサンラカにいるソフィアとライリーとエリーを指導員として連れてきた。
彼等に接客業のイロハを学んで貰う。流石貴族の子息・子女だけあって読み書き算術はお手の物だ。物販の職員には電卓の使い方、ホールスタッフにはオーダータブレットや呼び出し時計の使い方、ホテルスタッフには接客に加えてベットメイキングなど指導した。
研修に落ちれば不合格となるので皆必死になって頑張っている。脱落者が何名か出るかな?と思っていたが意外にも全員合格した。
ホテルと食事処は改装中なので接客マナーのレッスンなどをして貰っている。残るは物販、本日
1階は雑貨、2階は宝飾品、3階は化粧品と服飾だ。
「皆よく研修を頑張りました。本日より
私の挨拶に皆の
店には
店内には所せましと品物が並んでいる。カサンラカで並んでいた品物とは別に高級志向ということで日本でちょっとした高価な物を並べてみた。
しかし目玉は化粧品である。カサンラカで並べていた100均コスメではなく、ドラックストアのプチコスを採用した。値段もぼったくり価格ではあるが、鑑定したら地球産の物は効能がアップするのだ。いつの間にか
「いらっしゃいませ。」
人数制限をしながら店を回していく。
「ヒヨリ様、大変です。」
店内を巡回していたら店員が走って来た。
「何があった?」
「ファルメリア公爵令嬢がヒヨリ様をお呼びです。美の魔法薬を独占契約したいと仰っていて…」
公爵家という後ろ盾に慄いてる従業員に
「分かりました。私から話をする。案内してくれ。」
安心するように笑顔を浮かべる。
ご令嬢の我儘を聞く義理はない。確かファルメリア公爵はナヴァール公爵と敵対関係にあった筈だ。
令嬢の態度次第ではナヴァール公に連絡してファルメリア公爵へ苦情を入れて貰おう。
私はソファーにふんぞり返っている令嬢を鑑定し
「お初にお目にかかります。
彼女の名前を把握した。
名乗っても無いのに名前を当てられた事に気を良くした彼女は
「あら、店主は分かってるじゃない。でもこの店の店員は駄目ね。
私を褒めて店員をこき下ろした。
とっても不愉快である。
「そうですか、ではお帰り下さい。」
私はニッコリと笑顔でさっさと帰れとばかりに退場を促す。
「は?」
何を言われたのか分からないと
「化粧品の独占契約をしろとか、
嫌味たっぷりに帰れと言い捨てる。
「な、な、何様ですの!?
激高する彼女に
「そうですか、ナヴァール公爵家を敵に回すと仰るのですねぇ。」
虎の威を借る狐になった。
「~~~っ!」
「これから抗議文が届きますねぇ。お嬢様の失態は誰が責任を取るのでしょう?」
憤怒の
「では退出して頂きましょうか。」
護衛を呼んで彼女達を退店させる。
そしてファルメリア公爵とそれに連なる貴族を出禁にしたのであった。
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