第19話 ムカデ
社会的には死んでいるから、あとは肉体が死ねば万事すっきりする。
子供の頃、大きい岩をひっくり返したら、ムカデがうじゃうじゃ居て物凄く気持ち悪かった記憶がある。
今の大人になった俺は、あの頃のムカデのような存在に近い。岩の下に隠れて誰にも見えないようにひっそりと生活している。社会の嫌われ者。誰か俺を殺して。
あなたは喜んでムカデをペットにすることができるか? 体長171センチのムカデと交尾できるか? そういうことだ。
でもムカデはこの世にひとりぼっちじゃない。ムカデは何万も存在する。ムカデ同士、岩の下で仲良くしよう。
それだけがムカデに生まれた者たちの最後の希望だ。
ムカデちゃんは会社をサボって手首を切った。ムカデくんはその血を美味しそうに舌で舐めた。
仲良くウニョウニョ踊りましょう。世間から気持ち悪がられても。
◆
やってらんねえぜ。鏡に映る俺がキモすぎる。完璧な輪郭、完璧な目、完璧な鼻、完璧な口元、完璧な眉、完璧な髪……酔っ払ってる時は確かにそう見えた。だがシラフで鏡を見るとそこには醜い豚がいた。俺は再び酒を飲んで、寝た。
目が覚めると彼女はもうベッドの上にいなかった。
かけがえのある愛しい人よ。
南無阿弥陀仏。南無妙法蓮華経。
戦争は嫌だって何度も言っている。俺は健康になりたいと言って、タバコに火をつけた。早く死にたい。
君が傷つけられた事に意味はない。
高校時代のあの日、君が家から出ずに眠っていたら、君はレイプされなかった。でもその代わりに他の誰かがレイプされていた。俺はそう思う。
誰かが負うはずだった傷を、たまたま君が負ってしまった。ただ運が悪かっただけ。
高校時代、俺の初恋の女の子がレイプされた。
俺は10年経った今も犯人を許せない。目の前にいたら殺したい。刑務所に入ってもいい。全国に名前と顔が出てもいい。正しいのは絶対に俺だ。殺さないと気が済まない。犯罪者になってもいい。
俺はまともじゃいられない。
まともが分からない。
北海道に行って、犯人を殺したい。
孤独だけが俺の友達。
失うものは無い。
死ぬことよりも辛いことなんて、この世界には幾らでもある。彼女は心を殺された。
誰かが仲間とゲラゲラ笑ってる部屋の、その隣の部屋では、誰かが1人ぼっちで手首を切って泣いている。
高校時代の俺が暗い部屋でずっと泣いている。俺はお前が誇れるような大人には成れなかった。でも俺は何も間違ってないと思う。戦争が嫌いだ。ウクライナに募金した。
俺は今、高校時代のことを思い出して泣いている。いろいろ思い出して泣いている。
大人になれなかった。
くだらない。
◆
体調悪くてsyrup16gのライブ行けなかった。残念すぎる。
今日、syrup16gの本が届いた。辞書くらい分厚い。半年くらいかけて読む。もう頭が働かねーから本がろくに読めない。
死にたくてしょうがない。おれの願いは一つも叶わないから。結局は孤独。泣いている。
つづく
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