美少女(攻略対象)まみれのハーレム・スターウォーズ!!

呑竜

「第1章:夫婦誕生!!」

第1話「いつかの未来で!!」

 ~~~新堂助しんどうたすく~~~





「……あなたって、将来とんでもない女ったらしになりそうよね」


 昔、お袋にしみじみと言われたことがある。


 クラスメイトや近所のお姉さんなど何人もの女の子たちが、俺の誕生日を祝いに家に来てくれた日のことだ。

 プレゼントに紛れ込ませたラブレターとか、秘密のメッセージカードとか、そういったものをひとつひとつ取り上げながら、お袋はしげしげと俺の顔を眺めた。

 潔癖症のお袋は、とりわけそういうことにはうるさい人だった。


 バカ言えと、俺は思ってた。

 俺をそのへんの男と一緒にすんなと。

 女の子ひとりひとりにきちんと向き合い、絶対に適当には扱わないと。 

 ふわふわ浮ついた気持ちではつき合わないと。 

 



 そんな風に、思ってたんだけど……。


「ごめんお袋。……俺にもどうしてこうなったのか、さっぱりわからねえ」


 目を覚ますと、布団に寝ていた。

 両サイドに女の子が寝ていた。


 右手を御子神蛍みこがみほたるに捕まっていた。

 肘から先が、現代の剣豪を気取るポニテの剣道少女の、中学生離れした豊かな胸にサンドイッチされていた。


 左手を小山妙子こやまたえこに枕代わりにされていた。

 ぼさぼさ天パのツンデレメガネっ娘が、俺の肩口で可憐な少女みたいにスヤスヤ寝息を立てていた。


 ……事案だ。

 幼なじみふたりをハーレムみたいにはべらす事案だ。


 俺は表面上は平然を装いながらも、パニックに陥っていた。

 記憶を探ったが、理由も経緯もわからない。

 ただ事実として、両手に花とばかりにふたりと寝ていた。


 御子神は和風な夜着、妙子はモノトーンの素っ気ないパジャマ姿。

 幸いにも、服を着ていた。

 俺自身はパジャマを着てて──繰り返すが、ちゃんと着ていたので──最悪な事態は避けられた……はずだ。


「……おおっと、どこへ行くのだ、旦那様?」


 御子神がわずかに目を開け、とがめるような目線を向けてくる。

 逃げようとしたのを、させじと俺の上にのしかかってきた。ボリューミーな胸の膨らみが、むにぃっと押し付けられた。


「……あんた、あたしたちにここまでしておいて、まさかただで済まそうってんじゃないでしょうね? よもやそのまま逃げようってんじゃないでしょうね?」


 妙子が鋭い目で俺をにらみつけてくる。

 逃がさんとばかりに俺の肘を脇で挟み、両足で胴をホールドしてきた。


 御子神の縦四方たてしほう

 妙子の変形肘固め。


 痛いキツいという以上に、年頃の女の子の柔らかい肉が、いろんなとこに当たってるのが問題だった。

 いろんな意味で焦って逃げようとするのだが、押さえ込みと関節技を同時に受けていては、さすがに身動きがとれない。


「お……まえらっ、普段仲悪いくせに、なんでこんな時だけ息ぴったりなんだよ……っ」


 力の入れ具合、体重の乗せ具合、連携も完璧。

 足掻けば足掻くほどに罪悪感を締め上げる憎い仕掛け。


「な、なあ……。話し合おうじゃないか、ふたりとも」

 つとめて爽やかな笑顔を意識しながら提案した。

「俺さ。寝起きでちょっと状況がつかめてないんだよ。別に逃げるとかじゃなくてさ、落ち着いて整理してみたいんだ。ほんと、逃げるとかじゃないんだ。ないんです。ただちょっと距離を置いてさ。冷静に事実のみを分析してさ。そのためにはいったん離れる必要があってさ……」


 ぎろり。

 ぎろり。


「……はい、このままでいいと思います」


 やむをえまい。

 このままで状況を整理してみよう。


 要は筋道立った反論が出来ればいいのだ。

 多少強引でも、勢いで納得させられればいいのだ。


 まず、ここは俺の家の俺の部屋。

 2人分の布団で3人寝ていた。

 御子神も妙子も自前の寝着を着ていて、お泊まりする気満点。

 

 ……ま、まあそんなこともあるだろう。

 3人とも幼なじみだし、お泊まり会ぐらいするさ。

 御子神と妙子は犬猿の仲だけど、何がきっかけで仲直りするかなんて、人間わかったもんじゃない。


 ……次はえーと、ふたりの様子だ。

 もしなんらかの間違いがあったとしたら、ちょっとは見た目に出るんじゃないか? 

 つまり、何もなければ何もない。

 イエス、ザッツライト。


「えっと……」


 ほつれた髪。

 微かな汗の匂い。

 寝着の着崩れ。


「……っ」


 思春期ど真ん中の女の子の乱れた姿に、ドキリとさせられた。

 思わず赤くなった。


 いやそうじゃない。ドキリとしてる場合じゃない。

 赤面してる場合でもない。

 おっぱいとお尻から目を離せ。

 皮膚感覚から意識を遮断せよ。

 感じるな。考えろ。


「……あんたね、一応言っとくけど、いまさらどうあがいても無駄だからね?」


 妙子は諭すような口調で告げた。


「……どういうことだよ?」


「今やあたしたちはあんたの奴隷であり、所有物であり……」


 妙子のセリフを御子神が引き継いだ。


「嫁でもある。物理的にも、もう旦那様のモノになってしまった。かくなる上は、ふたり揃ってもらってもらうしかないのだ」

 

「……っ」


 全身の毛穴という毛穴から冷や汗が流れ出た。

 視界がぐにゃりと歪んだ。


 なぜだ……なぜ俺の人生は、目覚めた瞬間終わってるんだ。

 齢14にして幼なじみふたりを奴隷化とか、エロゲの設定だってそこまで鬼畜じゃねえよ……。 


 ──いや待て。焦るな焦るな……こういう時は記憶を一から組み立てるんだ。ひとつひとつ丁寧に思い出すんだ。いったい何があったのか……。


 俺は考えた。

 必死に考えた。

 なんで寝起きに、いきなり人生の岐路に立たされているのか。


 まずはそう、俺と彼女の出会いからだ。

 それはある、春の日から始まったんだ──。

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