第8話 生者と死者の狭間で ③

ースキル、展開!!!


俺の二丁のライフルは大きく変形し一つに合体すると、一丁の巨大な鎌に姿を変えた。


ーマジック発動!!! 『 青焔魔刃』《ブルー ・マジックスライサー》


シエルは、ルミナをほおり投げると、俺目掛けて突進してくる。両手の刃物は長く延び、

次々と


俺は奴の攻撃を器用に躱し、そして真っ二つに切り裂いた。


ガシッ!!!


奴の身体はスライスチーズのように真っ二つに裂け、ドロドロに溶けだした。


俺は剣を元の銃の形状に戻すと、尽かさず強く引き金を連射し続けた。


青白い閃光が辺りを覆い尽くす。


そしてそれは、爆発して粉々になった。


辺りに水蒸気が舞い上がり、生暖かい空気が立ち込める。


「やったか……!?」


俺はゼェゼェ息を吐きながら、銃を構えた。


ぶくぶく奇妙に泡立ち、煙を放出し人のような姿になっていく。


俺は、再び銃を連射した。


だが、炎弾は煙に弾かれ、煙の向こう側から人のような姿のような影がゆらやら揺れていた。

何度も何度も連射しても、無駄だった。


俺の余力は、残ってない。


スキル発動するには、それなりのエネルギーを要する。


最後の力を振り絞り炎弾を飛ばすが、それは虚しく煙に弾かれてしまった。

煙の向こう側の泡は、みるみる人の姿になり姿形は元の人間のように戻った。


彼女の中には、膨大な魔力が隠されているようだ。それがわ何処と無く奇妙さと不気味さを帯びていた。細身でルミナと体型は同じ位だが、パワーが三倍以上違う…



見えない念糸は、敵の魔力の流れを鋭く捉え、封じ込めるようだった。


ースキル発動、『青雷鳥』!!!


俺は、再び間合いを取りながら引き金を引いた。弾丸はまるで生き物のように、空中で軌道を自在に変えシャンデリアを狙った。


その時だった。ルミナは敵の魔力の流れを先読みしたのか、念糸が絡みつく。念糸は静かに敵の魔力を捕らえ、瞬時に封じ込めた。シエルの動きが一瞬止まる。


俺は冷静に狙いを定め、再び弾丸を放った。


ー『青雷鳥』《サンダーバード》


弾丸はまるで鳥のように空中で大きく弧を描く。


「何のつもりなんだ?」

シエルは、真顔で俺の方を見つめた。


「見ての通り、お前を狙ったんだ。俺に気を止めて無かったみたいだから。」


天井のシャンデリアが、床に落下し、ルミナは咄嗟に彼女から離れた。硝子が陽に反射し、シエルを照らす。奴も、ダークネスだ。





彼女の身体の動きは弱まり、そして緩慢になった。だが、彼女は、ゆらゆら揺れながら俺目掛けて襲いかかってきた。


「クソッ…」


俺は歯軋りすると、再びライフルを構えた。ルミナは、体力が削がれまともに動く事は出来ないだろう。


なら、自分が動くしかない…

俺は、再び奴目掛けて突進した。



急に視野が曇っていった。

モコモコと、紫色のガスのような煙が部屋を充満させた。煙の向こう側から、男性の人影が垣間見えた。


「シエル様、ボスがお呼びです。」


それは、聞き覚えのある懐かしい声だった。 シエルは、ピタリと動きを止めると煙の方の人影に視線を移した。


「何だい、シリウス、折角、いい所だったのに…」


「急いで来て欲しいとの事です。」


煙は弱くなっていき、そこから見覚えのある男性の姿が現れた。


「あ…」

俺の瞳孔は、小刻みに収縮した。


こうして実際に対面すると、複雑な気持ちを抑えきれない。


ーシリウス・グレン…

彼は、俺がかつて施設でお世話になった人だった。クールで聡明で、優しい人で面倒見がよかった。



彼の肌は白く、全身には血の気が全く感じられない。かつての柔和な姿は消え失せ、今やその目は血走り、肌は無機質になり、爪は黒く尖っており、黒い翼が生えていた。彼は、悪魔のようだ。


彼の身体から発せられる硫黄のような独特の甘い匂いは、正しくダークネスそのものだ。


「シリウス、知り合いか?」

シエルは、彼に尋ねた。


「いいえ、知らない人ですね」


シリウスは、ゆっくり視線をこちらにやる。


彼の体内から、禍々しい強大なオーラを感じた。


「オズ、奴は、もう人ではない。」


ルミナは直感したのか、首を横に振った。


「分かってる」

そう言ったものの、俺の心臓の動悸は激しく鼓動していた。


ー もう、彼は向こう側の人だ。


俺は強い怒りを飲み込み、唇を噛み締め再び銃を構えた。


ー『青龍炎雷』《ブルー•ドラゴン・サンダー》!!!


銃口から群青色の炎が勢いよく噴出された。

バチバチ花火が炸裂したような強烈な音が鳴り響く。群青色の炎は、大きく龍のようにうねりながらシリウス目掛けて突進する。



だが、それは虚しく彼の手前で弾かれた。

彼はこちらを軽く一瞥するだけで、シエルと共に煙の向う側へと消えていった。







今日は、朝から近隣に住むハンター同士の近況報告と作戦会議が催されることになっていた。


ここ、ノルヴィー公国 グリーンズシティーでは、ダークネス討伐部隊専門のギルドが各地で点在している。


ギルドはハンター全体を管理・支援する世界規模の組織で、王国からは独立し時には対立する事もあるらしい。その組織は、ハンターの登録とID管理、ハンターライセンスの発行などを行っている。


彼らの主な仕事は、仕事の斡旋と報酬の支払い、獲得アイテムの査定・換金、倒されたダークネスの解体や買い取り、養成施設の運営、育成などだ。


中には、裏組織やダークネスと繋がりがあるギルド部隊もあるらしく、今にベールに包まれている。


俺は基本的に独立してハンターの仕事をしているが、依頼が来ない日はギルドからの指示に従うようにしている。

それに、所属しているギルドからの後ろ盾があると、何かあった時に助かる。


俺は、寝ているルミナを置いて、ギルドの会議へと出向く事にした。


ライフルを装備しバイクに跨ると、ギアをめいいっぱい回した。


 バイクに乗ってる間だけは、怒りが和らぐ。

俺は、スピードを全開にし風を全身に浴びた。



ギルドの広い会場内に着くと、ぞろぞろとハンターが集まり集まり賑わいを見せていた。




「やあ、オズ、久しぶりだな。」

ヒューイが、微笑みコチラに手をふる。


「やあ、皆、元気そうだな」

俺は久しぶりに仲間に会うと、胸がすくわれた。


親しい仲間達もぞろぞろやってきて、俺は気持ちを切り替えた。


俺は、いつもは彼等に毒を吐き捨てているのだが、今はそんな気分ではない。


「どうした?お前らしくないな。」


ヒューイはしばらく沈黙を保ち、ただ静かに俺の表情を見つめていた。


「どうした?怒ったような顔して……」


「いや、別に……」


俺は、困惑した。

彼は優しいし頼りになるが、時々何かを見透かしたように深く洞察してくる所がある。

俺は普段は感情は極力表に出さない方だし、内面を読まれるのは苦手だ。






部屋のドアが静かに開き、シルクハットの中年男性が姿を表した。彼は、ここのギルド内の統括部長である。彼の素性は誰も知らず、ベールに包まれている。


「ええ…今回は、西地区…サジタリウスのメンバーから活動内容を報告してもらう。」


「はい。私達のチームはですね、グリーンズ西三の街中で、ドールの一団が居まして…」



例のいつもの馬鹿に長い会議が終わると、俺達は統括部長に指示されたエリアへと向かう事にした。俺達は、ギルドの社有車に乗り込むとギルドの司令官から指示された敵のアジトへと向かった。


車は森の奥へ奥へと突き進む。次第に奥に進むと、あたりに奇妙な硫黄臭のようなものを感じる。


「ヒューイ、ここで良いのか?何か、怪しい匂いがするんだが…」

デューイが、訝しながらハンドルを握る。

「大丈夫だ。今回は、ダークネスではなくドールの討伐が仕事だから。だが…何か奇妙だな。」


森の中は徐々に暗くなっていき、俺達を乗せたワゴン車は大きくガタガタ揺れた。いつの間にか、森の奥へ奥へと入っていった。


「ねぇ、アレ見て。」

カリーナが、顔をしかめて畑の方を指差した。


辺りの畑に、案山子の一団が点在していた。

そのカカシ達は、一人一人違った顔に見え、何処と無く人間のようにも見える。


ー間違いない。奴らは、ダークネスだ。

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