カッピング

 冬休みも終わり、担任の先生に卒業後の事を話した。先生は、もちろん驚いてフリーズ状態となり、後に興奮して喜んでいた。多分『やったー!就職率上がったぞ!』と…ノルマを達成した気分だったに違いない。

 僕は、学校側に書いてもらわないといけない書類諸々を渡し、廊下に出ると裕太が待っていた。

「よっ!終わったか?」

「うん。」

「それにしてもすげぇよな、お前。ついこの間まで『就職どうしよう〜』って、そこの掲示板を泣きながら眺めてたのにな。」

「ははっ。そうだね、泣いてないけど。」

「俺も大学が休みに入ったら、ブラジルへ遊びに行くからな。」

「うん、待ってる。でも場所によっては、相当治安が悪いから気をつけて。」

「マジか〜。翔吾は大丈夫なのかよ。」

「会社の人もいるし、日本ほどではないけど治安は良いって聞いてる。不安はあるけど行ってダメだと思ったら帰ってくるよ。」

「えぇ…!そんなあっさり言うなよ。」

「冗談だよ。」

「翔吾が言うと、冗談に聞こえねぇよ。」


 

 店に、コーヒー豆が10種類届いた。

 澤村さんから、毎日するという宿題を出されていた。カッピングも目的によって違うのだけれども、僕が今日から行うカッピングは、違う種類の豆の味、香りを知る為のテイスティングだ。豆は、挽き目や挽き方で味が変わる。そして、日にちが経つにつれて変化していく。どの豆も一番美味しく飲める条件を探す。

 

 さぁ、やるぞ!


「翔吾、一度に10種類の豆をカッピングするのか?流石に味がわからなくならないかね?」

 じぃちゃんが声を掛けてきた。

「ううん、5種類ずつ。流石にね…時間を空けてやるよ。」

「そうか。後で私も参加しよう。味と香りの答え合わせだ。」

 

 こうしてカッピングで過ごす、じぃちゃんとの時間も楽しかった。


 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る