第11話 告白



 雨音が乗りたがっているスプラッシュコースターは点検明けの為か割と人は並んでおらず、十分程度の待ち時間で乗れそうな雰囲気であった。


 「私ジェットコースターて今まで乗った事あまりないの、水飛沫が上がるようなジェットコースターに限っては一度も」


 意外だなと思った、雨音の性格上ジェットコースターなど大好物に見えるのに。


 「意外だね、好きそうなのに」


 「……親が心配性というか何というか、子供の頃は「もしもの事があったらいけないから」ってさ〜、けど最近は大きくなったから「自己の判断でしたい事していいわよ」って」


 一人娘ってなるとそりゃ両親も心配になるかもね、と心で納得しつつ腕組みをしながウンウンとうなづいた。


 「お待たせしました、何名様ですか?」


 僕は人差し指と中指を立てて「二名です」と答えると。


 案内された先は一番前の席であった。


 「大丈夫かな?」


 いつになく雨音は不安そうな顔つきをしていた。


 「大丈夫だよ、さっき見てた限りだとそこまで激しくなさそうだし」


 「うん……」


 「心配なら手を繋ごうか?」


 さっと左手を出すとそこに雨音の右手が覆いかぶさった。


 

 ✳︎ ✳︎ ✳︎




 あれから十五分くらい経っただろうか?


 スプラッシュコースターを降りてから雨音の様子がおかしいような気がする……


 スプラッシュコースターに関してはそこまで激しくは無かったものの、最後に水飛沫が上がるポイントで先頭の席だった事もあり予想以上に水を浴びてしまった。


 雨音はというと、コースターを降りて早々に「お手洗いに行ってくるね」と駆けて行ったきり中々帰って来ないので心配していた。



 「ごめん、お待たせ」


 「僕は大丈夫、雨音の方こそ大丈夫?」


 「。大丈夫だよ、次はお待ちかねの

颯斗くんの乗りたいアトラクションだね!」


 反応がいつもより少し鈍いというか少し遅いような?気もしたが、体調が悪いという感じではなさそうだし、心配のし過ぎかもしれないと思い雨音の手を取り観覧車へと向かった。


 「はは〜ん、颯斗くんが乗りたかったてのは観覧車ね」


 「まあね」


 「。確かに、締めにはうってつけだね!」


 

 るんるんとしている雨音を他所に、僕は口から心臓が飛び出しそうになっていた。

 観覧車が頂上に達する前に「大事な話しがあるんだ」と切り出して告白をする。と考えれば考えるほど視界が狭くなっていく。


 「颯斗くん乗るよ!!!」


 その言葉にハッとなり前を見ると、観覧車に一人乗り込んだ雨音が僕を手招きしていた。


 僕が雨音と対面の席に座ると、観覧車のドアがスタッフの手によって閉められた。


 「わあ、綺麗だね〜」


 「うん」


 雨音のテンションは観覧車に乗ってからも変わらず、いや、上がる一方であった。それはそうだろう、みなとみらいを一望出来る夜景が標高が上がれば上がる程煌びやかに輝いているのだから。

 しかし、それとは逆に僕のテンションは……


 (告白を)


 (告白を)


 (告白を)


 (うっし、頂上の少し手前に差しかった。今だ。勇気を出せ)


 「あ、あの」

 

 「颯斗くん!」


 まさかの雨音と声が重なった。

 

 「あ、お先にどうぞ」

 

 雨音は手でジェスチャーを入れつつ僕に譲ってくれた。肩に力が入りつつも雨音に問いかけた。



 「実は……大事な話しが」


 「……うん」

 

 「好きです。付き合って下さい」


 「……」


 「……」


 「……喜んで」

  


 僕は嬉しさのあまり思わず立ち上がってガッツポーズをしていた。


 微笑みながら雨音は手招きをするように自身の隣へと僕を引き寄せた。


 「写真を撮ろ、一緒に」


 「うん。そういえば雨音さっき話しかけてた事なかった?」


 「。ん?気にしないで。ほら写真撮るよ〜近づいて」


 カシャッ。


 みなとみらいの夜景をバッグに肩を寄せあって写真を撮った。




 

 そして、

  

 初めてのキスをした。


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