第96話 知り合いなんて中々出来ない

 会議から数日が経ったある日

 草介と茉央は空港へある人物を見送りに来ていた。


「こんな状況なので私は北海道に戻ります。

 色々とお世話になりました。」


 岩垣明美だ。


 魔人との戦いで負った傷も癒えた明美は北海道へ帰る事を選んだ。

 氷華は残っていいと言っていたものの、何処も戦力が足りないのは同じで、拠点に戻った方がいいだろうという判断だ。


「こちらこそ明美さんのお陰で助かりました。お元気で。」


「何言ってるの。あいつらから逃げ切れたのは茉央ちゃんのお陰よ。ありがとう。」


「あの時、お前の超重力空間グラビティエリアがなかったら俺たちは逃げ切れなかった…お前のお陰だよ。」


 魔人から逃げ切れたのは、残りの魔力が少ない中、彼女が全力を出してくれたからだ。

 あのスキルがなければ、俺たちは逃げ切る事ができなかった。


 礼を言うと、何故か目を見開いてこちらを見ていた。


「何だよ。」


「いえ…そういえば貴方とは憎まれ口をたたいてばかりで普通に話した事はなかったなって…」


 確かに明美の言う通り、俺たちは探索時以外まともに会話をした事がない。


「お前が目の敵にしてくるからだろ。」


「貴方が氷華先輩に対して馴れ馴れしいから——まあいいです。

 私たち、パーティとはいってもあまり行動を共にした事がありませんでしたが、今回の件で貴方を知る事が出来ました。

 不本意ですが、氷華先輩の横に立つことを認めてあげます。」


 別に彼女の許可を貰う必要はないのだが…

 まあ、認めてくれたということだろう。




 空港へと向かう彼女の後ろ姿を見つめる。


「明美さん、行っちゃいましたね。」


「まあ、今は何処も大変だからそれなりに強い探索者は拠点に居ないとね。」


「私たちはこれからどうしますか?

 あの魔人を倒すためにはレベルアップが必要ですけど…ダンジョンに潜れない中でどうやってレベルを上げたらいいのか…」


 現状、俺たちはダンジョンに潜る事ができない。というのも、いざ魔人に狙われた時に対抗する戦力を持っていないからだ。

 3人でも逃げるのが精一杯だったのに2人になった今、遭遇してしまえば勝てる見込みはない。


「俺たちと同等レベルの探索者が居ればパーティ組めるんだけどなぁ。

 現状、中堅クラスが数人いるけど魔人討伐には乗り気じゃないみたいだし…誰かいないかかなぁ。金城さん、知り合いとかいない?」


 長年探索者をやっている割に知り合いがいない俺は、金城さんに頼る事にする。

 彼女は半年で名を上げた探索者。

 俺がいない間、パーティ勧誘なんかは受けただろうし、それなりに知り合いがいてもおかしくない。


「すみません。臨時で組む事はあったんですけど、基本は一人だったので知り合いはいないです。」


「そっか…じゃあ、隆二にでも聞いてみよう。誰かいい人を紹介してくれるかも知れない。」



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