第94話 いくつになっても会議は緊張する

 那覇ダンジョン ギルド総合案内所


 魔人たちからなんとか逃げ延びた3人は、休む間もなくダンジョンを出る為、上階を突破して行った。

 ダンジョン内に居てはいつ襲われるかわからない。外に出た方が安全だと判断したからだ。


 ギルドへ戻った3人は魔人の情報を伝えた後、すぐに治療室に回された。

 草介は比較的軽症で済んだが、他の2人は重症の上、魔力の枯渇も相まって1日以上目が覚める事はなかった。




 魔人と出会ったから1週間後。

 丁度傷も癒えた頃、俺はギルドから呼び出しを受けていた。


 隆二に連れられ、俺はギルド内にある会議室へ向かっていた。


 普段俺たち探索者が使っている受付があるのがギルド1階。2階には緊急治療室。

 それより上は職員しか入れない場所の筈だ。


「で、俺はなんで呼び出されたんだ?会議なんて行きたくないんだけど。」


「俺だって行きたかねーよ。でも魔人と出会ったのはお前が初めてなんだ。情報共有はしっかりしないダメだろ?」


 俺の報告があってから那覇ダンジョンでは魔人の捜索が行われた。

 しかし、魔人の姿を見つけることは出来ず現在に至る。


「今から集まるのは各地方のギルド職人とトップランカー達だ。現状、魔人の存在は探索者に伝わってはいるものの、噂話程度にしか思われていない。当事者から詳しい説明があった方がいいだろう。」


 他の県でも魔人の捜索が行われたようだが、結局俺たち以外誰も魔人に出会っていない。


 トップランカーの会議か…

 ちょっと緊張するな。


 隆二に連れられた会議室に入るとモニターが置いてあり、既に会議が始まっている様子だった。


「お待たせしました。沖縄から山本隆二、榊草介ただいま到着しました。」


 モニター越しだが、全員の視線が此方に集まっているような感じがした。

 緊張している俺に対し、間の抜けた聞き覚えのある声が聞こえる。


『相変わらず面倒ごとに巻き込まれてるみたいだね〜。せっかく帰ったのに全然休めてないじゃん。』


「この声…氷華か。」


『せ〜かい。北海道代表、小郡氷華です。よろしく。』


 ついでに周囲への挨拶も済ませる氷華。

 こういう場には慣れているようで、緊張している様子はまるで感じられない。


 氷華の挨拶を皮切りに、自己紹介が始まった。


『それじゃあ儂も挨拶しておこうかのぉ。

 福岡代表、牧本虎吉まきもととらきちじゃ。

 歳を重ねとるぶん知識だけは持っとる。

 わからんことが何でも相談してくれ。』


 ガハハと高笑いする高齢の男性。

 60歳を超えてるとは思えない膨れ上がった筋肉に大きな肉体。画面越しでもまだまだ現役と言わんばかりのオーラを発している。


『はぁ…面倒くさい…こんな会議、早く終わりたいのに…はぁ…わかってる…わかってるよ。この流れ…挨拶しなきゃ先に進まないんでしょ…はぁ…静岡代表、宵越英太よいごしえいた。よろしく。』


 長い前髪で両目が隠れている青年。

 会議中なのに何故かゲームをしているが誰も指摘しないのだろうか?


『自己紹介かい!イイね!新しい仲間が出来るのは良いことだ!東京代表、鳳凰院聖也ほうおういんせいやだ!。これからよろしくね!榊草介くん!!』


 金髪碧眼、端正な顔立ちで女子受けが良さそうだが、声が大きく少し暑苦しい感じの青年。現状、日本の探索者最強と言われている男だ。


『あの〜氷華ちゃんに聞いたんだけど、草介くんが岡山のスタンピード解決してくれたんだよね?ありがとう。

 私、岡山代表の蝶野鈴芽ちょうのすずめです。スタンピードの時は東京に居た所為で戻れなくて…本当に助かったわ。』


 優しい笑みを浮かべる女性。完璧なスタイルを誇り、見るもの全てが目を奪われそうになる。


『……京都代表、西園寺玲さいおんじれい。』


 無口でクールな印象の女性。

 名前以外特に話さず、また無口になった。


『え〜、自己紹介も済んだようですので早速会議に移りたいと思います。

 今回は那覇ダンジョン所属、榊草介様からご報告があった魔人という集団についての話です。早速ですが、魔人の特徴など知っている情報のご報告をお願いします。』


 進行役の職員の言葉で会議が始まった。


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