二十八話  お正直女と、よがり神

昔々の越後のことらいて、ある村にの、やけに正直な女がおったて。

好き嫌いがはっきりしててな、この男はええ、ありゃだめだこて、何ての。

ワラの抱き方が良くねえ、あんなんじゃ極楽いけえねえ、さっぱりだいや。


とまあ、どこまでも正直だすけ、男に合わせるって事しねんだなあ。

よがった振りが出来ねえんだよ。女は振りしてるうちに、本気汁出んのに。

そんでの、よがり神が夢ん中へあらわれたってんや……


よがり神「遊びをせんとや~生まれけむ~戯れせんとや~生まれけん~」

    「よがる女の声聞けば~男の身さえこそ揺るがるれ~」

    「女ん蜜は男呼ぶ~蜜に溺れた蜂んなる~蜂は蜂でも花んため~」

    「花は燃ゆ~花は燃ゆ~花は燃ゆ~」 

お正直女「あいやーこりゃまあ、すけべえ神様、いや、よがり神でねえろか」

よがり神「そうらいて、導くために出て来たんらいのう。もっと極楽味わえや」  

    「おめさんや、お正直にも良し悪しがあんでねかや、合わせるんど」

    「飯炊きと同じだこてや、初めポッポッ、でグツグツ、んでパクッ」

    「男に食べられるなんて思ってちゃだめら。おめさんが男食べんだよ」

お正直女「あの、ワラはの、男によってはええて、何度も極楽へいってまうて」

    「したけんど、さっぱり男じゃ、極楽んごの字もねえ。冷めてまうわ」

よがり神「ええこつ教えるすけ、思いっ切りとしがみつけて、で爪たてろ」

    「そうすっとな、たいてえの男は悦になっぞ、勘違いすんもな」

お正直女「てこつは、えがった振りすって事だの、でこっちもえくなるってか」

    「ほかほか、振りしてるうちに、振りでなくなるって事だのう」

    「よしゃ、わかったて、それもありだのう。よがり神様や、あんがとの」

よがり神「お正直壺も正直過ぎてはいかんこてや。そんうち、お蜜壺なっから」

    「で今度は、『のぬふ腰』教えてやっからな、また夢ん中でなっ」

お正直女「今すぐ教えてくらっしゃい、今すぐ、今、あっ、あっ、あーー……」



この女は、肝心な所で目が覚めたて。夢ん続きが見てー見てーとな。

のぬふ腰って、何の事らいや。んー、まんずは、あの野郎に爪立てっかいや。

てめえばかり極楽いきやがって、っとまあ思いつつ、二度寝に入ったってっさ。

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