対話体小説 小話集

藤原 てるてる

一話   コロナと、顕微 鏡子先生との対話

私の名前は、顕微 鏡子。

特技はズームアップ、ものすごく小さくても、正体つかんじゃうわよ。

さあ、拡大やるわよ。倍率アップ。

いたいた、髪の毛の1000分の1位の大きさね、王冠付きね。うぷっ。

なんなのこれ、これが正体ね。この際、対話してやるから。


私  「あなたの正体、わかったわよ。それは知ってるの?」

コロナ「わかりましたか。今時の人間達には驚きですね」

私  「100年前のスペイン風邪のころとは、大違いよ」

コロナ「あれは、人間が広げたのですよ。戦争なんかするから」

私  「それはそうだけど、今度の世界大流行は、じゃあ何なの?」

コロナ「我々の領分に人間達が入って来たからだ」

   「野生動物達と、おとなしく共存してたのに、こっちは」

   「それで我々は、生存の戦略の見直しをしたのだ」

私  「生物は基本生き抜こうとして、それはわかるけど……」

コロナ「本当の本当は、人間との共存が出来ればいい」

   「それには、毒を弱めればいいのだが、でも」

私  「でもじゃなくて、このまま毒を強めて、母体でもある人が倒れたら、あなた達も」

コロナ「個体はそうでも、我々全体では、そうでもないんです」   

   「なにせ、こちらは小さいので、数の上では勝るのです」

   「人間達は多勢に無勢だという、この基本をわかったほうがいい」

私  「究極の目的は何なの?」

コロナ「この地球の野生を犯さないこと。我々の世界でもあるのです」

   「人間はこの星を壊し過ぎ。ほかの生き物がどれだけ消えたことか」

私  「では、使命は?」

コロナ「我々の天敵が人間だったら、そしたら……」

私  「人間の本当の天敵は、ウイルスってこと?」

コロナ「それは教えません」

私  「あなたは、どこへ向かうの?」

コロナ「教えません」



ここで、顕微 鏡子先生は、深い霧の中に入りました。

いや、泥沼に入ったのでしょうか。

でも、でもと言いたい。そう言い続けたい。

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