140字小説集・ホラー系

藤崎 柚葉

後ろの正面だあれ

 私は声を出せない。だから行動で示すしかない。

 後ろから彼に抱きつく。彼は驚いた様子で私を見ていた。


「私のこと、大好きって言ってたじゃない」


 あれ? 私、今、声が……。

 驚いたのは私の方だった。


 なぜ、人形であるはずの私が声を出せているの?

 私を八つ裂きしたあなたは横たわっている。

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