第15話 デート
私はデートに着ていけるような服を殆ど持っていなかった。
正人さんとのデートの時はブラウスにカーディガンというような恰好だった。
いまさらそんな恰好はしたくない。
折角だから買おうとブティックに行った。
何着も試着をした末に小花柄の少し丈の長いワンピースを買った。
そして美容院にも行った。
髪はおろして、サイドを少し編み上げにして変化を付けるやり方を教わった。
日曜日、11:05に駅に行った。
早く行ってもなんかがっついているみたいだし、もしかしたらいないかもしれないと思いながら遅れて行くことを悪いと思いながらも5分過ぎにした。
西崎さんが硬い表情で待っているのが見えた。
西崎さんは私を見つけて微笑んだ。
「朋美さん。来てくれてありがとう。ダメかと思ったよ。」
「西崎さん、お誘いありがとうございます。驚きました。」
「いきなりゴメンね。なかなか話すタイミングがないので、強硬手段に出たよ。」
「マスターがガードしていますからね。」
「そうだよ。マスター怖いから。ハハハ。それにしても普段着姿素敵だよ。」
「ありがとうございます。あの、西崎さん、まずはお友達からということでお願いします。」
「はい。わかりました。で、どこか行きたいところある? 」
「・・・あの、まだ西崎さんのこと良く知らないので、どこかお話しできるところに・・・」
「そうだね。じゃ、今日は天気もいいので、横浜に行ってお茶をしたり散歩したり、中華街で飲茶食べるのはどうかな? 」
「はい。楽しそうです。」
普段着の西崎さんはお店で見る西崎さんよりさらに優しく感じた。
そして緊張することなくいろいろ話せて楽しかった。
夜、西崎さんはちゃんと私を家に送り届けてくれた。
「西崎さん、今日はありがとうございました。楽しかったです。」
「僕も楽しかったよ。またね。」
「はい。おやすみなさい。」
西崎さんはあっさり帰っていった。
私はその後も西崎さんとデートを重ねた。どうしてもデートは日曜日だけだった。
毎回楽しい時間を過ごしたが、とくに進展はなかった。
金曜日の夜、牧村さんと西崎さんが店に来た。
西崎さんは牧村さんがトイレに立った隙に私にウインクをした。
でも、その日は早くに牧村さんと一緒に帰ってしまった。
その日の閉店後、櫻井君が話しかけてきた。
「ちょっと、話があるんだけど。」
「何? 」
「ここでは話しづらいから、家に戻ったら直ぐにこの番号に電話くれる? 」
櫻井君は私に携帯の番号の書いた紙を渡した。
「なんか怖い・・・」
「知っておいた方がいいことだよ。」
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