第12話 お父さんからの手紙


私の心臓は急激に高鳴った。

封を開けるべきか悩んだ。

でも意を決して開けると中に入っていたのはホテルの封筒で、その中身は4冊の台紙に貼られた写真だった。

そう、あの事故の日に撮った記念の写真だ。


・ ウエディングドレスを着ている朋美

・ 着物を着ている朋美

・ 正人さんとウエディングドレスの朋美

・ 正人さんと着物の朋美

この4枚の写真がそれぞれ立派な台紙に貼られていた。


そして、ホテル側からのプレゼントとして、二人がレストランで仲睦まじく話しているところや、二人で食事をしているところ、着替えた私を見つめるやさしい微笑みの正人さんなど、何気ないスナップ写真が数枚小さな封筒に入っていた。


私はこの写真を見て嗚咽した。



もう・・・見たくなかったのに・・・



ホテルの封筒に全ての写真を入れて、これをどうしようかと悩んだ。

捨ててしまおうかとも思った。

でもそれも出来なかった。

大きな宅配用の封筒は処分しようと何気なく中を見たとき、袋の中に手紙が入っているのを見つけた。

正人さんの父親からだった。



—朋美さん

—葬式の時は悪かった。満足にお別れをさせてやれなかった。すまない。

—あれから妻は寝込んでしまい、最近ようやく起きられるようになりました。

—君も同じような想いをしているのではないかと心を痛めています。

—お送りした写真はホテルから届いたものです。妻には見せていません。

—でも、君が写っているのだし、正人とのことは現実だったわけだから、これは私から君に送ります。

 —私もスナップ写真を見て胸が詰まりました。

—正人と君がこんなに楽しそうにしているなんて、正人の笑った顔も久しぶりに見た。

—朋美さん、辛いと思う。でもまだ君は若い。早く次に踏み出してほしい。

—先日、正人の納骨を終えました。以前、君から墓の場所を教えてくれと言われましたが、あえてお教えしません。

—悪く思わないで欲しい。すまない。

—正人のこと愛してくれてありがとう。

—感謝!

                                            ―達 正之



泣いた・・・

ずっと涙が止まらなかった。


私だけでなく御家族の方も苦悩されている。

でもお父様は私に「ありがとう」と言ってくれた。

写真も送ってくれた。


正人さん・・・優しかった正人さん・・・


・・・もう・・・お別れしないといけません。


・・・『淡い思い出』にしなくては・・・

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