第5話「花嫁と最後の言葉《ラストレター》」
「メイさえよければ、卒業したら……、結婚しよう」
「っ……。はいっ……! よろこんで」
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あれから数日。ピーターとメイは、正式に婚約を結び、アストレア元辺境伯の娘と、モール家子息の縁組は、王都中の話題となった。
特に、学園内でのメイの立場は大きく変わり、軽々しくメイにちょっかいをかける者はいなくなった。
「ピーターごめん! 今日も師匠と魔法の特訓するから……」
「大丈夫。待ってるよ」
「ほんと!? でも、昨日も一昨日も待ってもらってるし、悪いよ……」
「何言ってんだ。俺がメイと帰りたいんだから、待ってるのは当然だろ?」
「えへへ。わかった! ありがと!」
ピーターの告白から、メイは徐々に明るさを取り戻していった。
最近では卑屈になることもなく、むしろこれまで以上に魔法に打ち込みながらも、毎日笑顔を見せていた。
「はいはい。学園ではいちゃつくの禁止。糖分過多で死にそう」
そんな二人を見てか、最近忙しいサラとマリアにも笑顔が増えていた。
「まぁまぁ、マリア。もう少しいちゃつかせてやれって。明日からはメイの聖英級試験に向けた練習が始まるわけだし」
あれから、メイにいくつかの魔法や、その威力、知識等を見せてもらったサラとマリアは、メイを正式に聖英級魔術師に推薦し、その試験が2週間後にまで迫っていた。
「確かに。ほぼ一日中、魔法魔法魔法だから、いちゃついてる暇はないかも。ピーター寂しがるなよぉ?」
「誰が寂しがりやだ。その辺はわきまえてるっつーの」
とは言いつつも、少し寂しそうなのが顔を見ればわかるので、ピーターを除く3人は、顔を見合わせて同時に吹き出してしまう。
その瞬間。
「カンカンカンカーン! カンカンカンカーン! カンカンカンカーン!」
大きな鐘の音が、王都中に響き渡った。
「おいおい。なんだ?」
「お祭りでもやるのかな?」
のんきな2人とは対照的に、険しい顔をするサラとマリア。
「マリア、これってそういうことで良いんだよね?」
「うーん……、認めたくないけど……というか信じたくないけど、そういうことだろうね」
そう言うとマリアは、風魔法で自身を浮かせ、空中で呪文を唱えだした。
ピーターとメイが首をかしげているうちに、魔法の詠唱は終わり、すぐに辺り一帯に結界が張り巡らされた。
「結界魔法!? おい、どういうことだ。説明しろ」
「ピーター、メイ、落ち着いて聞いてくれ。まずさっき鳴った鐘は、王族と一部の者しか知らない危険信号の1つだ。しかも、鐘は続けて3回鳴らされた。これは、脅威レベルが最大の時に鳴らされるものだ。つまり……」
「大規模な魔物の侵攻、言わば
魔物大暴走とは、小型から~大型の魔物が、数百~数千、もしくはそれ以上の群れをなして、都市に進行してくるというもの。
一般的に、その危険度は★・★★・★★★の3つあり、★は地元冒険者ギルドで対処できるレベル。
★★は、周辺都市との協力が必要なレベル。そして★★★は国家防衛が必要なレベル、という風になっている。
ちなみに、今回の魔物大暴走は危険度★★★である。
「なるほどな。んなら、俺は街の人たちをできるだけ避難させておく。魔物の討伐は任せるぜ」
「分かった。それと言いにくいんだけど……。メイは、明らかに今の私たちの戦力になるわ……。無理強いはしないけど、助けてくれると嬉しい」
「俺はメイの意見を尊重する。信用するって決めてるしな」
サラもマリアも予想外の答えに驚いたが、ピーターの覚悟の決まった顔を見て安心した。
「ピーター、私行ってくる。絶対戻ってくるから! 待ってて!」
「おう! 頑張れよ!」
こうして、聖英級3人と聖英級候補1人による、魔物との攻防戦が始まった。
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