第2話 始まりの村の教会と、最弱勇者
「おぉ、勇者よ! 死んでしまうとは情けない!」
このおっさんは完全に顔見知りだ……でもさっきまでは司会の人にシメられ……
「ここは、天国か――」
「そんなわけないじゃろ」
目の前にたくさんの星が舞う……
「って、痛いじゃないか! 聖職者のくせにこんなことに力を使っていいのか!」
「うるさいのう。世界最弱の村で一番弱いくせしてスキルなんぞに目覚めておったら殴りたくもなるわ!」
なんだろうか……このおっさんの鼻をほじる行為は何故か頭に……すきる……ス……
「スキルってあのスキル?」
「スキルなんてワシは一つしか知らんわ」
「どんなのだった?」
僕はこのじいさんにすり寄る。
「自分で確認しろ! スキルの項目が目に入った瞬間にスキルプレートなんざとじてやったわい!」
それは別にいいとして、人の顔につばをかけるなんて礼儀を学べ、おっさん!
まぁ、スキルが気になる僕は顔を拭いてすぐ確認するけど!
―――――――――――――――――――――――
ダーヤマ
筋力 3
守り 1
魔力 2
MP 0
素早さ 2
知恵 0
スキル 勇者
聖剣に聖なる力的な何かを溜めること
ができる
もし魔物が傷口にそれで攻撃されれば悶
絶まちがいなし! まぁ、聖剣を持ち上
げられたらですけど……プ〜クスクス
―――――――――――――――――――――――
……スキルにバカにされた、だと!
なんか普通に笑われるより文字のほうが腹立つな!
「いや、それは今朝のあれで自分の弱さをより一層……ブフッ」
「思い出して笑ってんじゃねぇよ! あと、なんで心の声が分か――」
バタン
突然、扉がいきおい良く開く。
びっくりして僕もおっさんも静ま――
「それはじゃの、そういうキャラが一人でもいたほうが面白いからという作――」
「いや、話を進めないでください! ここは一旦静かになるところですよね?」
部屋に入ってきた怖い顔の司会ちゃんがおっさんの胸ぐらをつかむ。
おっさんは困ったような顔で
「だって……お主、出オチキャラじゃろ? 出オチキャラに対して割いてる時間などないわ!」
「誰が出オチキャラですか! 序盤の村にしか出でこないあなたのほうが出番ないでしょ!」
あれ? なんか話が変な方向に……
「フン! 出番の話などしとらんわ。ワシより出番があろうと所詮お主は出オチじゃ」
「ちょっと……なんだかメタい感じになってきたんでやめません?」
「ですね」「そうじなゃ」
……意外とあっさりまとまったな……あっさり……あさりのみそ汁食べた――
「インスタントならあるぞ?」
…………………………
「なぁ? なにか言わんのか? お~い」
「うるせぇな! 脱線するなって言ったとこだろ!」
怒りが上限に達して机をたたく。
ポキッ
「いってぇぇぇぇええええ!!!!!!! い、今絶対に骨折れた」
「ま、まさか筋力3で腕を折るとは……守り1はこんなのも耐えれないのか。ほれ、ヒールじゃ」
痛みが少しずつ和らいでいく。
最後に骨がつながる音(?)がして曲がった腕だけが残った。
「……何してくれとんだジジイ!」
「大丈夫じゃダーヤマ……」
おっさんはにっこり微笑んでそうつぶやく。
まさか何か秘策が……
「いや、もう一度腕を折る……まぁ秘策と言えば秘策じゃの」
「いやいやいやいや何、平然とそんなこと言っちゃってんの」
「大丈夫じゃ、筋力3で折れるような骨じゃし、ワシの力でもいけるじゃろ」
おっさんが一歩、また一歩とジリジリ近づいてくる。
「まだ死にた――」
逃げようと振り返ると司会ちゃんが待機していた。
「我慢してください、勇者ダーヤマ」
そのまま僕は取り押さえられる。
「暴れないようにそのまま抑えといてくれお嬢さん」
そう言っておっさんは腕をつかむ。
ミシミシ
ハハッ、この音どこかで聞いたことあるな……
そして、そのままグニュンと曲がり、まっすぐになった。
「……まさかこんなに柔らかいなんて……頑張って生きるんじゃぞ。ところでお嬢さん……何しに来たんじゃ?」
「へ?」
その直後、何かを思い出したかのようにアホ面がだんだん怖い顔に戻ってゆく。
「そうですよ! 勇者さん、何勝手に死んでるんですか? あなたが死んでセーブポイントに転送されたせいで一時間の道を戻る必要があったんですから!」
……はい? 何かおかしくない? だよね、おかしいよね?
「で、でもそれは司会ちゃんに絞めこ――」
「うるさいです! とにかく次死んだらもう迎えに来ませんからね!」
「はい……」
そう返事をすると
「十分後に出発ですからね!」
と言って走っていった。
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