第6話

 あの後、男性からは名刺が渡された。そして、今度の日曜日に撮影をしようという流れになる。時間と場所は電話とメールで追って知らせるということになった。

 あの後、芹香は夢のような話にルンルン気分で家に帰った。そして、親にモデルのスカウトを受けたことを話す。そして、やってみたいという事を伝えると、心配そうな顔もしたが許可してくれた。


「えっ?!モデル?!」


 次の日に学校に行った芹香は真奈美にモデルにスカウトされたことを話した。真奈美はその言葉に驚き、更に言葉を綴る。

「……モデル業界も衰退したのね。」

「ちょっと!なんでそうなるのよ?!」

 さらっと残酷な言葉を言う真奈美。そして、芹香はその言葉に異論を唱える。そして、傍にいる「友達になりましょう」宣言をした芽衣もその場にちゃっかりといる。芽衣も鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしていた。

「まあ、本人がやりたいのならいいんじゃない?」

 そう言って芽衣が場をまとめる。その時、芽衣が何かを感じたのか、芹香に言った。

「そういえば、その人から名刺を貰ったって言っていたけど、今って持ってる?」

「うん、あるよ。」

 そう言って、財布から名刺を取り出す。芽衣がその名刺を受け取り、それを見て言う。

「まぁ、偽物でもなさそうだし、スカウトされたのは本当みたいね。」

 実は疑っていましたと言わんばかりの発言をする芽衣。そして、名刺を芹香に返すと芹香はその名刺を大事そうに財布の中にしまった。

 

 チャイムが鳴り、授業が始まるので三人はその場を後にした。


 放課後、芽衣は透と部室に行きそれぞれの活動をしていた。そして、休憩に入ったときに芽衣が言う。


「ねぇ、芹香がモデルにスカウトされた話は聞いた?」


「……は?」


 突然の言葉に、透は拍子抜けする声を出す。


「誰が、モデルにスカウトされたって……?」

「だから、芹香。」

「土方、何の冗談を言ってるんだ?」

「冗談じゃなくて本当。」

「いや、どう考えてもあり得ないだろ。」

「でも、本当なのよ。」

「いや、天変地異が起こらない限り無理だろ。」

「真奈美もそんなこと言っていたわ。でも大マジの話よ。」

「いや、だってどうなったらそうなるんだ?」

「不思議と言えば不思議だけど、ホントなのよ。」

「マジかよ。」

「マジです。」

「………。」

「………。」


「嘘だろ………。」


 芽衣が冗談で言っているわけじゃないことが分かると、透は心底信じられないという顔をする。


「俺、今日はもう帰るわ………。」


 そう言って、透は部室を出た。芽衣は「またね~。」と言って物語の続きを書き始めた。そして、書いてる途中で何かを思い出したのか、ネットを開きある事を調べ始めた。


 夕飯の時間が終わり、芹香がリビングでくつろいでいると母親に声を掛けられた。

「芹香~、颯希ちゃんが芹香とお話ししたいから家に来てくれないかって言っているんだけど、どうする?行く?」

「颯希ちゃんが?うん、分かった。行くよって言っておいて」

「分かったわ。」


 その時、芹香のスマホにメールが届いた音が響いた。

 

 芹香は行く準備をして透の家に向かった。近所なので透の家には五分もあれば着く。

 透の家に着き、チャイムを鳴らす。

「こんばんは~。」

「あら、いらっしゃい。さっ!上がって!」

 家の上がり、リビングに通される。リビングには颯希がいた。芹香が来たことに気付き声を上げる。

「いらっしゃい!芹香ちゃん!」

 颯希がポニーテールを揺らしながら笑顔で挨拶する。

「こんばんは、颯希ちゃん。何か私に話があるんだって?」

「えっとぉ………。」

 芹香の問いに颯希が言葉を濁す。

「実は、芹香ちゃんを呼ぶように言ったのはお兄ちゃんなんです……。」

「……へ?」



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