高校一年生の三学期

冬休みも終わり、いつもと同じように重い足取りで教室に着く。


これは、いつも変わらない。

どんなに季節が過ぎても、私もクラスの人たちも変わらない。


『別にいい方向にいったらいいだなんて期待はしていないけれど……』

『でも……。』

『誰ひとり、教室で私を助ける人は居なかった……。』

『本当に、誰ひとりも……。』

『皆、見て見ぬふりをするんだ。』

『いじめがあるという事実を無かったことにするんだ……。』


『もしも、私に話をかけたり、仲良くすると自分がいじめに巻き込まれる。』

『そう思ったのかもしれない。』

『それは、分かるよ。』

『誰だって、いじめられたくないもの。』

『でも、私がいじめられてるのを見て見ぬふりをして、私の存在がまるで、最初から居ないような扱いをするなら、最初から、悪口も嫌がらせもしないでよ。』

『そっとしておいてよ。』



それに、ある日、私の椅子を使った人がいた。

けれども、その椅子は、もとに戻されることはなかった。


私は、苛立って、

「使うならちゃんと戻せよ。」

そう舌打ちをして、怒鳴った。

先生と近くにいた生徒は、驚いた様子であった。



私は、本当は、こんなことを思っているのよ。

今まで出さなかっただけで。


けれども、いじめは無くならなかった。



いつも、教室では、騒いでいる者がいる。

私の頭の中が、ガンガンと音が響いている。

花粉症だった私は、薬が効かず、頭も重くて、座っているのが精一杯だった。

そんな中に、嫌いな生徒の話し声や叫び声、笑い声が聞こえるのだ。

頭に響いて聞こえる。

そんな時間が苦痛だった。

私の顔の眉に力が入る。



花粉症で辛い私は、顔に力が入る。

廊下を歩いているときの出来事だった。

「うわっ。」

「こわっ。」

顔が赤い女子生徒が私に向かって言った。


私は、その声が耳に残りながら教室に向かう。


いつもこうだ…。

体にも傷が残らない方法で、傷つける。

言葉の刃物でね…。

録音してない限り証拠は残らない。

いい苛め方だよな。


でも、『確実に人の人生を奪っていることは確かだ。』

私の嫌いな人ノートにその人が加わった。

何人いることだろうか…。

軽く40人は超しているかもな…。

それはね、『嫌なことをしてくるからよ。』

そんなことがなかったら、嫌いな人ノートに加わらないわ。



あと少しで春休み。

そのことだけが私の救いだった。

『あと少しで、こんな嫌なクラスから離れられる。』

『大嫌いな生徒、先生から離れられる。』

『それだけが私の今生きる理由だった。』



一年の終業式の最後まで、嫌なことを言われ続けた。



ようやく一年が終わる。

やっと、春休みだ。

これから私はどうなるのだろう…。

不安と希望が入り交じりながら、校舎を出た。

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