憂鬱な文化祭

10月の後半に入ると、学校では、また憂鬱なイベントがある。



それは……「文化祭だ…。」




大体、なんで、文化祭なんてやらなきゃいけないんだろうか。



結局は、教師達が楽しみたいだけの行事なんじゃないかとすら思う…。




クラスでの出し物もあるから、私はね、結局、やりたくない係りに無理やり当てられたりとか…するんだよね…。




それに…「クラスみんなで一致団結しようね!楽しもうね!」




なんて言う人は必ずひとり、どこにでも居るよね。





私はね、そういうの強制なのはおかしいと思うんだよね。



人が楽しいとかって思うのって、

本当に自分が心から居て良かった、楽しかったって思うのは自分が決めることであって

他人が決めつけるものでは無いと思う!






『だから、私に、共用しないで!!』


口に出して、ぶちギレたい気持ちだったけど

そんな事、言えるわけもなく…

ただ、心の中で怒りが収まるのを待った。


私のクラスでは、似顔絵描きとフランクフルトの出し物に決定した。



それを決めたのもクラスの勘違いリーダーが勝手に決めたことだ。




まぁ、私は、どうでもいいんだけれども。




張り切るヤツは勝手に張り切っとけって思っていた……。


けれども、私を、ブチ切れする出来事が起こったんだ。


文化祭の出し物で食品を扱うクラスは、代表4人が検便検査というものをしなければならない決まりだった…。



男子生徒が二人、女子生徒が二人、検便しなければならない。



あの恥ずかしい検便検査…



多感な時期だし、自分のウンチを持っていかなければならないと思うと、重くなんとも言えない気分になった…。


リーダー気取りの人達が、その検便検査をすればいいのに

女子たち全員が集まって

あみだクジで決めることになった…。


みんな、リーダー気取りの机に集まった。



私も、後ろの方に佇む。



紙に無数のたて線を書いている。

下の方に、ウンチのマークを適当の場所に2つ書いていた。


当たり?ウンチマークが見えないように、紙を折り返した。



これで、ウンチが見えなくなっていった。




そして、

みんな、次々と、選んで

「あたし、ココ~」っと名前を書いている。



私は…

一番最後に空欄になったところに名前を書いた。



選ぶ権利も無いらしい…。

まぁ、私は、そういう扱いなのだろう…。



もし、私が、ウンチを引き当てた場合、私は、その1秒後に、東堂ウンコとあだ名がつくに決まっている…。

ことだろう…。




『なんで、こんな面倒な事があるんだよ…。

文化祭も、検便もすべて無くなってしまえばいいのに…。』

少し、怒りと悔しい気持ちが入り交じって、私の、心臓をキューっと苦しめる…。




そして、あみだクジの折り畳んでいる紙を開き始めた。




これで…

誰がウンチかが決まる……。


結果は……





『よかった………私じゃない!』



私は、ホッと胸をなでおろした。





だが、みんなの予想は違っていたのだろう。

『東堂さんが、受ければいいのに』

そう思っていたのだろう。



分かってる…。

そういう仲間外れにする人は、大抵嫌なことは押し付けるタチだから…。



だから、あみだクジだって、みんなが最初に選んだ。

最後は私にしちゃえば、何も言い返せないとでも思ったのか。



それよりも、おかしいのが

どうして、販売する方が普通は検便受けるでしょ?

私はね、販売なんてしないし、

なのに検便させようってのはおかしいんじゃないの?




やりたい奴だけやればいいじゃない!

張り切ってる奴がやればいいんだよ!




この学校もクラスも

みんな狂ってる。


ウンチを引き当てたのは、私のことをいちいち言う奴だ。

悪口、文句ばかり言っているその奴は、口元がモコッとしていて、顔がデカイ奴なんだ。



私は、『ざまあ』って思った。

こいつは、私が構ってすら無いのに、というか、相手にする価値すらないの。

だから、もう私の目にはこいつは写ってすらないの。

それなのに、私が身に付けている可愛いマスコットの付いたストラップを見つけては、

「東堂さんあのストラップつけてる。」

とクラスのみんなに言っていた。


「……。」

私は、無言を貫いた。

それに、嫌っているなら私を見なければいい。

そんなに私のことが気になりますか?



ある日のランチタイムでは、私はペットボトルに入ったレモンティーを飲んでいた時、アンタ何て言ったか覚えてる?


「東堂さん、尿飲んでる。」

「尿飲んでるよ。ウケる。」

そう言ったよな。

『見りゃ分かるだろうが!紅茶の飲み物だってことを。』

そう思ったけど、何も言わないで聞こえないフリをした。


話を戻す。


文化祭には、クラス全員の演し物がある。


なんとも憂鬱だった。

学校生活が楽しくないのに、一緒に行動する友達もいないのに、何を楽しみに文化祭をまわればいいのよ。


これほどまで惨めなことは無いわ。


一人でまわって楽しいと思う?

本当なら、友達と一緒にまわって、食べ物を一緒に食べたり、本当に高校生らしいこと出来るはずだった…。



クラスの演し物の写真を撮るために一部の人が集まっていた。

私は、写りたくないから帰る準備をしていた。

そのとき、先生が話しかけた。

「東堂さんも入るんだよ。」

と……。

絶対、知ってるくせに。

私がクラスから、いや、学年全員に嫌なことを言われていることを…。


それなのに、見てみぬフリをしたんだ。


とっさに、私の手首を先生が掴んだ。

「みんなが誘ってるじゃない!」

「どうしてそこに入らないの!」

先生が強めの口調で話す。


私はそれを振り払う。

そして、先生の顔を睨んだ。

『私がおとなしいからって、何をしても良いだなんて思うなよ。』

そう心の中で呟きながら睨んだ。


そして、私は、鞄を持ち、教室から出た。



私は、文化祭が開催する日の前、二日前から学校を休んだ。

いわゆるズル休みだ。

文化祭に出たくなかった私は、五日間連続で学校を休んだ。


何も私には係りが無かったから、いてもいなくても変わりないだろう。



五日間は、学校のことは忘れて、自分の好きなことを好きなだけした。


でも、学校には行かなければならない…。



憂鬱な文化祭は終わった。

けれども、憂鬱な学校はこれからも始まる…。

辞めればいいときっと思う。

うんん。自分でも、学校すぐに辞めたいと思っていた。

義務教育ではないし。

でも、せっかく選んだ学校だったし、辞められなかった…。

もう一度学校選ぶのも色々大変なのも分かっていたし。


頑張ればなんとかなる。

そう思っていたから…。



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