秘密の基地がそこにあった

 二×××年七月十九日。


 五年が経ちミドリは小学四年生の九歳になっていたが、いまだにミドリは入院生活を送っていた。『クライネ・レビン症候群』は未だ治る余地すらなかった。 


 セイトはミドリの見舞いに行く途中、ワンマカのキーホルダーを見つけた。


 ――確か、ミドリが好きだったアニメだったような……。


 そう思ったセイトはワンマカのガチャを一回引いた。


 ガチャを拾い、セイトは病院へと向かった。


 ミドリは今日も眠りについていた。眠りについて三日目経つ。


 セイトはミドリの寝顔を哀れむように見つめた。そして、枕の横に静かに紫色のキーホルダーを置き、机の上に一通の置手紙を添えた。


【ミドリへ。このキーホルダーがお守りになることを願っているよ。早く病気が治りますように。治ったら一緒に遊園地へ行こう。パパより】


 セイトは暫らくミドリが目を覚ますことを待ったが、目を覚ますことはなく大学へ戻ることにした。


 トゥルルルル――。


 セイトのスマートフォンに一本の電話が入った。


 相手はナツという人物からだった。


『もしもし、ナツ』


 セイトが第一声を放つ。


『ようやく基地の修復が終わったぞ』


 ナツが言う。


『そうか、ギンジにも伝えておくとするよ』


『頼んだ』


『明日その基地へ行ってもいいか?』


『ああ、場所は前と同じだ。あの森の中にある』


『わかっている、それでは』


 そう言って、セイトは電話を切った。


 セイトとナツ、ギンジは幼馴染であった。


 あの森とはセイトとナツ、ギンジが三十五年前の十五歳の時に見つけた秘密の場所だった。誰も住んでいなく、草木が生い茂る生き生きとした森だった。


 当時十五歳だった幼馴染の三人は、森の中に木の板を六枚程組み立てた小さな基地で過ごしていた。


 その木の板を六枚組み立てた小さな建物こそ、MODSの初代の基地であった。


 しかし、今はすっかりと森は沈んでしまい、基地も洪水により崩れてしまった。それでもナツはそこに基地を作りたいと考えていて、三十五年として、ようやく、新しい基地が完成したのだ。


 MODSはセイト達が十五歳の時に結成された組織で、初めは未来維持能力者開発組織などではなく、世界平和維持組織という名称だった。ただ、正義を貫き、近所の手助けをするだけのチームだった。


 ところが、大人になった三人は最初の目的を見失うようになってしまった。

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