第13話 再び殴られる女神と王

先生にサインをもらうと、なんか、訳わかんないサイン文字で読めなかった!!


結局先生の名前わかんないわこれ!!


それからなんか、そそくさとクリスはよそよそしくなったと言うか、とりあえず暇すぎるので私が掃除を始めると、なんか後ろから視線を感じた!!


パッと振り返るといないが気配はある……。王女の戦士の力を受け継いだので、気配だけは察知できるようになって、余計に気味が悪かった!


しかし夕飯時には何とか喋る。

夕飯はいつもクリスが作っていた。


「手伝いましょうか?」

と言うと


「いい!僕が作る!」

と言って聞かない。


兎肉を使った香草パスタやシチューの食卓で私はとりあえず聞いた。


「これからどうするつもりですか?」

と。

もう何度目かの質問だ。


「……少し考えた。

魔王を殺さずに生かして僕の配下につける。とりあえずそれで魔王討伐完了する。分身にもそう伝えた」

と言う。


「成る程…。それなら邪神は復活しないってことですね?…でも魔王が生きてると知れたら、その地区の人間達は黙ってないと思いますが?」

と言うとクリスは


「…大丈夫だ。魔王達は何か別の魔族に変身させて普通に暮らしてもらう」

と言う。


「でも、魔王だって本当にバレないですか?」


「でもが多いな。僕の案に文句でも?」

と言われたのでちょっと怖い。

しかしクリスは


「い、いや…その…ごめん。

別に大丈夫だと思う。ちゃんと魔王達を支配下に置き、コントロールしてみせるよ。大丈夫、ちょっと催眠術みたいなのをかけて洗脳しておけばいいんだから」

となんか怖いこと言い出した!!

魔王に催眠術かけて洗脳するなんて!!


「邪神の復活はそれで阻止できるし、魔王もいなくなって平和が訪れる。物語は終結…」

とクリスは言うが、私は疑問に思って手を挙げた。


「何!?まだ何か?」

とクリスは言う。


「待ってください。ちょっと思ったんですけど、魔王と言うトップの立場の者がいなくなったら当然席は開くから、次の魔王候補が空席を奪い、新しい魔王が誕生しちゃうんじゃないですか?


例えば魔王の息子とかいたら息子が二代目魔王みたいな…」

と言うとクリスは震え出した。


「なっ!新エレアさん?何てことを思いつくんだ!!」


「な、何ですか!?その新エレアって!」


「どう呼んだらいいのかわからない。君は僕の理想のエレアじゃないし、他の魂の転生体だし、前世の名前で呼ぶのももう死んじゃってるからおかしい。後、普通に日本語呼びはおかしい」

と言う。


「今まで通りエレアで」

そもそも理想のエレアとは!?


「とにかく君の考えだと現魔王を魔族に変えても新たな者が魔王となると言うんだね!?」


「はい、大体アニメだとそう言う展開が多いと思いました」


「どんだけ前世見てたんだ…。まあ、僕も作家だったから考えないわけではなかったけど、そんなものは操った現魔王が魔族と変化しても配下だった魔族に従わせて行けばいい。


これからは人間を襲わず、平和に協力して暮らす世界となるようにだ。

そして僕は勇者の役目も終えるだろう」

と結論を出す。


「……でも」


「しつこいな!まだ何か展開が広がると思ってるのか!?」

とクリスは言う。


「そう簡単に人間達との和解とかならない筈です。人間と魔族はずっと昔から戦ってきたから、人間側の嫌悪はあって、魔王という立場の者がいなくなり、クリスが魔族に人間と争うなと命令しても、人間側は黙っちゃいないと思います。


必ず。魔族に殺された人間達は復讐に魔族を殺しにかかるだろうし、魔族がもしも従順で弱くなったら、人間達に奴隷として扱われたりもするかも…」

そんなアニメ見たことあるもん。

と私は思ったことを言うと


「くっ!」

とクリスはなんか悔しそうに噛み締めた。


「に、人間達とも勇者としての交渉がいると?」

私はにこりとして


「その通りです!光の勇者様が人間達の各地の王様に訪問してなんとか話し合いで解決して、魔族と人間の平和条約を結ばせればいいと思います!」

と提案する私にクリスは


「それこそうまくいく保証もないから上手くいかない王様は操ることになるよ。結局!」

と言う。え、怖い。けど、もうそれしかないかも?戦争とかになっても嫌だし。


するとそこへオシリア様とレギオン王が現れて


『いやそれでいいのかい!?』

『あなたたち!ほんとに!!』

と突っ込んできた。

クリスは2人を見て消えた。

いや、一瞬で移動して2人をボコった!!


オシリア様はまた天井に頭をぶち抜きぶらりと下がっていたし、レギオン王は床に頭をぶち抜きお尻だけ出ている状態になった!

ひいいいいい!!


「く、クリス!!やりすぎよ!なんてことするの!」

と言うとクリスはハッとして


「ああ…すまない。この2人を見ると無性に殴りたくなる衝動に駆られて体が勝手に…」

と言い、とりあえず2人を引き抜き、元に戻した。私はとりあえずまた癒しの力で2人の腫れた頰やらコブを治癒した。


『エレアありがとう』

そもそもオシリア様自分で治癒したらいいのに。


『治癒の力はエレアに授けたから私は使えなくなったのよ。エレアが死ぬまではその力は私に返ってこないの』


「えっ!?そういうシステムだったんですね!?」


『うむ…そういうものじゃ。わしの光の力もほぼクリスに授けとるからクリスが死ぬまで戻って来んのう』

と言う。

そんなシステムなら最初からオシリア様とレギオン王が勇者と聖女となり2人で魔王や邪神を倒しに行けばいいのに!?

と私は思ったが


「この2人が魔王討伐とかしても絵にならない。何故なら魔王を倒すのは勇者や聖女(若くて綺麗な女の子)と言う相場が決まっているから無理だ!!


こんなおいぼれ爺さんと何歳か知らない若作りのババアが冒険の旅に出て読者は納得しない!!絵面も汚い!!挿絵に描く価値すらない!!』

と作者様は言い切った!!


まあ、確かに一理ある。

王道ファンタジーから逸れたものになる。


『いや、絵にならないならほれ、エレアと2人で討伐に行けばいいじゃろ?倒したくないとか駄々こねてないで』

とレギオン王が言うとクリスはギロリと睨んだ。


「やかましい!僕に半身を失わせて、地獄のような辛い生涯を終えろってのか!?このクソジジイが!!」


『ひっ!ひいいいい!!すいません!睨まないでください!!エレア!爺さんを助けてくれ!』

とレギオン王は私の後ろに隠れた。







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