第10話 逃げられない婚約式
ど、どうしよう!?
クリスのせいで?主にクリスのせいで、村あげての正式な婚約式(もはや、結婚式の予行練習)みたいになってきた!!
貴族でもないのに家同士契約が交わされ、契約書に絶対結婚します!のサインを入れられて期日になると結婚が成立する!!
それまでは婚約期間とし、婚約指輪をはめて過ごす。貴族ならば、本来夫となる家で結婚まで過ごす。
でも私の場合、魔王達を倒してから…倒したらすぐ結婚だ!!
ひいいいいい!!
これ、に、逃げれないやつよね!?
もし、契約書にサインしちゃったらもう本当に私、クリスの婚約者になって結婚しちゃうことになる!!
ど、どうしよー!?
で、でも今更だけどクリス以外にこの村にいい男がいない!!
わああ!小説ではエレアのその後なんて書かれてなかったし!脇役だからと全然注目してなかったけど、クリスの中身の前世はこの小説の作者様だし、作者様はエレアがお気に入り!理想MAXの女の子に仕上げている!!
ああー…。私なんてただの一読者でしかないし、ファンでもないのに…どうしてこんなことにいいいい!?
別にクリスの顔は悪くない。むしろ、モテモテで私は村娘達や王妃様達から嫉妬されている。どうしよう…。私普通にクリスのこと幼馴染としか思ってない!現段階では!!
悲しいことに恋愛感情なんて持てないよ!!イケメンが嫌だとか言うのじゃないけど、なんかどうしたらいいのかしら?
クリスは今、爆速で腕のいいドワーフの都に転移魔法で出かけて行き、婚約指輪を作っているらしい!!
ひいいいいい!!も、もう逃げるなら今しかないわ!!今だよね!!
知らない、魔王討伐とか!!ごめんなさい女神様、世界よりクリスと婚姻することの方が遥かに怖いです!!
も、もう逃げよう!!
と私はこっそりと村を抜け出した!!
危険だけど森に逃げ込み、身体能力が上がった戦士の力を利用して逃げた!!
「ハアハア、だいぶ走ったわ!少し休憩しよう!」
と水のある湖を見つけて水を飲んだり、少し泳いだりした。
この時代は素っ裸で泳ぐのが普通だし。
そろそろ服を着てどこか隠れ場所を探さないとと思って湖から上がると……。
私の服を持ち、こちらをめちゃめちゃ凝視しているクリスが無言で鼻血出しながら立っていた!!
「きゃーー!!」
私は湖に潜った。クリスに全裸見られたわ!!こんなことなら服を脱ぐんじゃなかった!!
「……エレア…」
「クリス!!ふ、服を返して!!後、向こう向いてて!!」
と叫ぶとクリスは爆速で後ろを向いた。
私は素早く着替えた。
「もういい?エレア?」
となんかまだクリスは鼻血が止まってないのか足元が真っ赤になっている。
どれだけ出したの!?
「クリスも鼻血拭いた方がいいよ…」
と脱力して言うとクリスは今気付いたかのように爆速でハンカチを取り出して鼻にあてがう。
「エレアが移動した気配を感じたから急いで戻ったんだ!どうしてこんなところまで来た!?」
と言うから私は
「……み、水浴びがしたくて…」
と言うと
「村でもできたろ?何故?それに森を通るなんて!魔物が出たら危ない!」
「へ、平気よ!私、ほら女神様から戦士の力ももらってるから!」
「僕はエレアに戦って欲しくない!」
と言う。
うーん、困ったわ。まさか婚約式が嫌で逃げ出したなんて言えないわ。
「……クリス…、私…一度だってクリスと付き合うとか、結婚したいとか言ってないのに…どうして勝手になんでも決めちゃうの!?
私…クリスのことは大事な幼馴染だと思ってるわ!で、でも…あの…恋愛の好きとかは思ってなくて…」
と言うとクリスは
「………全部…捻じ曲げてきたのに…。エレアは…書かなかったから…僕の思い通りに動かないのかな?」
とクリスはポケットから婚約指輪を取り出した。光り輝いている。自分の指に一つはめてもう一つを私の方に向けると指輪が爆速で私に向かい眩しくて私は目を瞑ってしまった!!
すると、私の指に婚約指輪がはまってしまったー!!
「ああああああああ!!」
引っ張っても取れないし、ポウっと輝くと魔法の小さな鎖が現れてクリスの指と私の指をガッシリ繋いだ!!
「な、何コレ!!?」
「何って……これでエレアと僕は一生一緒で離れないて事だよ」
とクリスはサラリとキラキラして言う!!
「ど、どういうことなの!?」
と言うとクリスは魔法の鎖を爆速で引っ張り、私は一瞬でクリスの元へ行った!!
「つまりどこに居ても何をしていてもこれを引っ張ればエレアは一瞬で僕のところに来れる!」
と言う。
何それ…。私の自由は!?
「村に戻ろうエレア。皆待ってるよ?」
ニコッと笑うクリスに私は寒気すら覚える。
その後、村に戻ると婚約式の用意はされていて村では豪華な料理にたくさんのお花が飾られてあり、私とクリスは指輪を見せ合い、親同士契約のサインを交わした。
もう…逃げられないんだわ…。
私は絶望した。
魔法の鎖は普段見えない。私は真っ白なワンピースに花の飾りをつけてまるで花嫁みたいに着飾られ村の皆から祝福された。
クリスも着飾ってまるで新郎みたいになっていた。はたから見ると、まるで王子様のように女の子達は思うだろうけど、私にはそう思えなかった。
本当の意味で私はクリスから逃げることはできなくなった…。
*
婚約式が終わり、明日は旅立ちというその夜に私は自室で探検を研いだ。
「クリスは…私の言うことなら多少は聞いてくれる…」
うまくいくかわからないけど…。
私が死ねと言えばクリスは…死ぬかも。
クリスから自由になるには…もう…殺すしかない。私は私の自由を取り戻すんだ!
そう決めて私は眠りについた。
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