爆速勇者が幼馴染の私を束縛してきます!

黒月白華

第1話 勇者の幼馴染転生

私はエレア・ザクセン17歳。

この平和な田舎村、サウザンド村で生まれた。いたって普通の農民の娘で性格も大人しく特に目立つタイプでは無いけど…困ったことがあった。


それはある特別な者がこの村で生まれたからだ。


そう、光の精霊に選ばれし勇者が誕生したのである。しかも私と同い年。


私は赤毛で肩まで伸びた髪に紫色の瞳を持っている。


対して幼馴染である、クリス・パステルは銀の髪に青の瞳を持つイケメンだ。当然めちゃくちゃモテる。


しかしクリスは近寄ってきた女の子達に爆速でフる。


「僕には心に決めた人がいる、それは君ではない。さようなら」

と冷たい目で爆速でフる。


彼は何でも爆速で済ます癖みたいなものがあった。例えば、箸が壊れたから村の男総出で日取りを決めて、手伝う計画を練っても前日の夜にクリスが爆速で光魔法で修復してしまうし、誰かが病気になると爆速で高級ポーションを作り救う。


ポーションは本来、特別な材料を使い

魔女や薬師が作るのを買い取るのだが、光の精霊に選ばれた彼は最も簡単に作り上げてしまう。


その為、何度も村に聖教会ライトベルという教会の人達が村に来て、クリスを教会に招き入れようとするが爆速で断った。


「僕はこの村で好きな人と結婚して普通に暮らしたいので教会に入る気はないです」

教会の人は諦めずに何度も来るがその度に断っていてお金を渡そうとしても断っていたし、とりあえず両親が説得しても応じなかった。


両親はお金を教会の人に返した。何故なら流石に息子のことを怒らせたらこんな村滅ぼされるとわかっていたから。教会の金より息子の機嫌を取っていた。両親だからこそ、クリスの凄さを分かり、そしてまた、愛しているしお金なんかで気持ちは動かなかったらしい。


そんなクリスは物心ついた10歳の秋祭りの村での収穫祭の時に幼馴染の私になんと告白してきた!


私は戸惑った。女の子達から睨まれた。いくら幼馴染だからと言ってこればかりは気軽に返事していいものじゃない。


しかも


「将来はエレアと結婚して子供を3人くらい作ってのんびり幸せに暮らして歳をとり死にたい」

とほぼプロポーズみたいなのを爆速でされた。


10歳の美少年に真剣に言われると私も恥ずかしく思ったが…、私は思いとどまった。


そう、私は知っていたのだ。

私には前世の記憶があった。

私は日本人の生まれ変わりで所謂、転生者というやつだ。


前世のよくあるファンタジー小説の一つの話にクリスが主人公のお話があった。暇つぶしで読んでいたファンタジー小説で、まあ普通に仲間と旅に出て困難に打ち勝ち、魔王を倒して旅の仲間の2人と道中仲良くなり、2人と結婚するというよくある男性向けハーレム展開のやつだった。


主人公であるクリスは話の中で確かに旅に出る前に幼馴染に


「帰ったら結婚しよう」

と告げて魔王討伐の旅に向かうが、途中で心変わりして綺麗な王女や聖女、2人の魅力と誘惑に負けて幼馴染のことなんかすっぽり忘れてしまうのだ。


だから今の私はクリスが好きだと言ってもどうせ物語に沿った一時的なもので旅に出たら忘れられるポジションだからと美少年の告白をやんわりはぐらかし断って過ごした。


「ごめんなさい、クリス。別に貴方のことは嫌いじゃないけどまだ私よくわからないの」

と。だってまだ子供だ。


しかしクリスは諦めなくて毎日綺麗なお花を爆速で積んでくるし、たまに水晶の洞窟で爆速で器用にブレスレットや髪飾り、ブローチなんかをドワーフの腕なしで精巧に作り上げて渡した。


とりあえず受け取るが、貰ったものはうちの倉庫に保管することにした。

そんなことがこの17歳になるまで続いた。クリスは全く諦めずに私に毎日毎日告白やプレゼントを渡してくる。


そんな時にとうとう!イベント発生でお城から王様の命でクリスが呼ばれた。もちろん勇者としての旅に出る為だろう。


良かった、これでクリスは王女か聖女かどたらかとラブラブになり結婚するだろう。さよならクリス。イケメンの顔を拝むのもこれまでね。


と思ってたらクリスは私の手を握り


「僕1人じゃ心細いので幼馴染のエレアもついてきてもらっていいですか?」

と言った!


んん!?こんな展開だっけ!?いや、心細くないでしょ!?17にもなって!!


しかしガッチリ離してくれない。


「えーと…呼ばれたのは君だけだよ?」

と兵士の皆さんもオロオロしている。


「そ、そうだよ、クリス。王様の命令には逆らえないよ?行って来なよ」

とアドバイスした。


「じゃあ、とりあえず王様に会うために飛ぶよ」

と言う。


「え?飛ぶ?」

誰もがキョトンとしていた。


「よくわからんが支度して明日の朝立つぞ」

と騎士団長みたいな人が言った。後ろにはちゃんと馬車が待機していて、今はもう夜更けだった。


予定なら明日の朝王都で馬車に乗ってクリスは城へ行くはずなのに。


私と手を繋いだまま彼は呪文を唱えると…


周囲に光の魔法陣が浮き上がり騎士団長もおろおろした。両親も


「く、クリス!?」

と叫ぶがクリスは


「母さん父さん、ちょっと行ってくるね」

とみんなの前から私とクリスは消えた!!

そしてあっという間に…なんと王様と王妃様の寝室に瞬間移動、いや、光の魔法陣で転移移動した!!


王妃様と王様は寝巻きでベッドに入って寝ようとしていた所に急に私たちが現れたもんでそりゃ驚いた!


「ぎゃあ!!」

「きゃっ!!」

との悲鳴にドタドタと衛兵やら護衛達が現れた。賊だと勘違いされました。

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