5月24日 実家へ帰らせていただきます。

「お姉さん優しいから、あなた良いお嫁さんになるよ。自分がもう少し若かったら付き合いたいね。でも出来ないから良い人見つけてね。」

 昨晩、ご近所のおじさんにそう言われた。

 きもも、ぐろろ、まじむりり、である。


 ここ最近、謎に絡まれているような気がする。コインランドリーでは旅行で来たシカゴ民のお兄さんに。教会ではギリシャ人(とはいってもオーストラリアに育ったのでギリシャ語があまりわからない)に。

 絡まれ体質というものがあると思うのだけど、自分は比較的話しかけられない人だと思っていた。気が緩んでいたのか。ゆるふわガール目指してないからなぁ。絶がなってないぞって怒られちゃう。念を極めないと。

 まじ困惑。よく知らない人に話しかけられるよね。文化的な違いなのか。


 第一問

 シカゴのお兄さんには、観光するならどこが良いのか聞かれた。許容範囲である。よくある質問。よし、ばっちこい、ということで「東京!」と返した。

「新宿が楽しいと思うよ。自然溢れる大きな公園、新宿御苑があるんだけどすぐ反対側にはGay districtがあるんだ。歌舞伎町とかもヤバい。あそこは一晩中ギラギラしていてホストクラブとかある」

 そこでホストクラブとはなんぞや、となったので写真を検索してあげた。がぽがぽお金を出してがぶがぶお酒を飲んでがはがはお喋りをするところだよ、と説明。

「ジャパニーズマフィアの仕切るところだからね、やばいっすよ」

「ラスベガスみたいな感じか!あそこもマフィアが取り仕切ってる」

「そうそう。そんな感じ」

 

 第二問

「日本最後の日は何をする?」

 ちょうどその日は親しい友人達と会う予定があったので、そのことが頭に浮かんだ。

「日本に住んでる友達と会って、寿司を食べるね」

 お兄さんはハリウッド映画でしか見ないような「マジで?」って顔をして「日本ですげぇ美味しい物をまだ食べてないんだけど、どこか良いところある?」と。質問だらけである。適当に「くら寿司でいいんじゃね?」とGoogle先生に画像を見せてあげる。

「寿司のビュッフェがしたいんだけどできる?」

 ビュッフェ……? 

 そう、回転寿司のことである。

「もちろんできるよ。タブレットで頼むとびゅーって来るし、回転してるのも取れるよ」

「あぁなるほど」


 ここで私は帰りたかった。

 疲れてしまったのである。現実ではここに書いてある以上に大変だった。(真面目に答えすぎた)

 精一杯の帰るぞオーラを出すと「俺も行くわ」と付いてきた。うわぁん、母ちゃんにうちでは飼えないって言われてるもん! 返してきなさいって言われるもん! などと心のチビッコが泣き出したところで、第三問目。


「同僚に日本ではデートの誘い方が違うって聞かれたんだけど、どう違うの?」

 無理である。他を当たってくれ。わからない。マジでわからない。とパニクった。

「大して変わらんよ」

「自分はよく街のバスケコートに行って、新しい人たちと出会うんだけど日本ではどう他人と知り合うの?」

 そう言われて、確かにと立ち止まってしまった。見覚えがある質問。

 若者よ、私もそれに困っている。

「職場や学校が多いかな。あとは日本には合コンって文化があって、男女が五人とかで集まって食事しながらお喋りをするんだ」

 行ったことないけど、と一言添える。

 それでもまだ納得がいかない様子であった。というか私も焦りすぎてよくわからないことを言った気がする。合コンとは……日本文化、なのか……?

 少し間があってから、若者は口を開いた。

「スピードデートみたいな感じ?」

「ちょっと違うかな。パーティー的な感じでみんなと話せる。ゲームとかもしたりするよ。それで気が合う人がいたら『ちょっと抜けない?』と言うらしい」

 納得しているのか悩んでいるのかよくわからない様子だったので、王様ゲームの説明もしないといけないのか、と気が遠くなってしまった。

 そうなったら奥の手である。

「まあ、そっちと大して変わらないよ。たぶん」

 先に話を終わらせるの術。

「そうか。ありがとう。僕はショーン」

 ひとまず納得した様子だった。

「私はべにこ」

「『べに』は紅色の?」

「そうそう、その通り」

 手を差し出され、握手。


⭐︎今日の曲⭐︎

Eliza - Wasn’t Looking

https://youtu.be/0nplzEY0IXA

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る