第35話 地下格闘技
「リチャード部長、何でも俺に頼まないでくれるかな?」
「そうは言いますが、これは1000億円の利権が関わった話なのです」
「だけど、これは地下格闘技の話なんでしょう? 俺は確かに人は殺せますが、格闘技とかできませんよ」
冗談じゃない…只の学生に荷が重い。
俺は殺人鬼だが、格闘技は皆無だ。
どう考えても無理だ。
「そこを何とか…ラビットファングのその力で、いよっアマチュア日本一!」
ハァ~格闘技ルールでやらされたら俺なんてゴミみたいなもんだ。
それに俺が死んだら明日香たちも殺される。
到底飲めない。
「仕方ない、俺から神代さんに話して置くよ」
「多分、相手は一流の格闘家…もう探すのは無理ですよ」
ハァ~無理な物は無理だ。
◆◆◆
「地上38階選ばれた者のみに入場が許されたフロア…そこに居るチャンプ…私達こそが地上最強を自負している…そのチャンプが弱音を吐くなど情けない」
「いや、俺アマチュアの部だし…幾ら言われても格闘技は無理ですよ」
「最初のは冗談としてもこれは君がやるべきだ…良い経験になるよ…どんな状況でも『殺せる』それを身につける為の企画部勤めだ」
「そこ迄言うのならやりますが…どうなっても仕方ありませんよ…あとこれは本来の仕事から離れた物の様な気がしますのでボーナスを要求します」
神代の顔色が変わった気がする。
「充分な報酬は払っているつもりだが」
「お金じゃなくて『物』です…最高の義手、義足が欲しいのです」
「そう…それなら良い…手配してやろう…これはビジネスだ、こちらに要求するのだから負けは許さん…では」
まだ話したい事はあるが通話は切れてしまった。
◆◆◆
もうやるしか無いな。
「リチャード部長…俺がやる事になりました」
「そうですか…頑張って下さいね」
この野郎…他人事だと思って…
「まぁ、やるだけやりますよ…それで相手は解るの」
写真をこちらに差し出して来た。
馬鹿なのか…
相手は『アイアンテイルズ』アメリカ人で現役のプロレスの世界チャンピオンって書いてある。
「まさか…これとプロレスをしろと言うのか?」
「そう言う事です」
「リチャード部長…あんた、こう言う法律で解決できない事を解決するプロだよな…なんでこんな不利な状況で受けるんですか?」
「それは佐藤が…交渉で負けたからです…相手にも我々みたいなプロが居てですね…私が気が付いた時にはこれで契約が済んだ後だったのです」
此奴ら…有能な筈だよな…違うのかよ…
「佐藤…」
「はい」
「覚えていろよ」
「…」
本当に…なに考えているんだよ。
◆◆◆
神奈川県某所の海沿いの倉庫。
此処が会場ですか…仕方がない。
だが、都合が良い…此処ならいける。
勝てるよ…
「ほう、逃げずに来たか…神代だからっていつも偉そうにしているのがムカつくんですよね」
「やる前からこちらの勝利は決まっていますよね、なんせ無敵のアイアンテイルズが居るんですから」
「どうして現役のプロが居るんですか?」
「そりゃお金を積めばね…小遣い稼ぎだよ」
「成程…それでルールはプロレスルールで、後で意義申しだて無し…それで良いですか?」
「ああ、間違いない…良いぜ、この馬鹿現役のチャンピオンに勝つつもりらしい馬鹿だな」
「私はチャンピオン…素人には絶対にまけませ~ん…キルユー」
「なら結構」
ああ、あの時を思い出す…勝てるよこれ…あいつ等馬鹿だ。
◆◆◆
「赤コーナー世界BAKAチャンピオン、アイアンテイルズーーーっ」
「さあ始まりました1000臆の利権が絡んだ地下プロレス…実況は…おっと我々暗黒同盟がさせて頂きます」
「青コーナー、負けは確定神代所属…只の高校生」
「最早、これはいじめですね…神代は何を考えているのでしょうか? 今ボディチェックが済みました」
パンイチで触られるのはキモイ。
「両者中央へ…」
仕方ない行くか…
「お前…ガリガリじゃねーか、そんなんで大丈夫か」
「どうも…」
「それでは…はじめーーーっ」
「さぁ掛ってこいやあああああーーーっ」
「俺はすぐにコーナーに戻った」
「なんだ、お前逃げるのかよ、ぐははは無様だ」
馬鹿なのは此奴らだ…
会場からも
沢山のブーイングが飛んでいる。
「なに、あれ無様ね」
「なんであんな無様な奴が地下のリングに上がるんだ」
「只の高校生じゃ可哀そうだ…さっさとホールドしてやれよ」
「ほら、さっさと来い…可哀そうだから簡単にホールドして終わりにしてやるよ」
「鈴木―――今だーー」
「はい」
馬鹿だ此奴らボディチェックは選手のみなんて…
あの時と一緒だ。
鈴木が放り投げ、俺の手にあるのは…
レミントンライアットショットガン
あの時と一緒だ。
プロレスには4カウントルールがある。
4カウント以内の反則はOK。
ならば…これはルール違反じゃない。
ズガンッ
ズガンッ
「あ~あ馬鹿が転がっている、レフリーがカウントして無かったから問題ないよな…それじゃ…そこの馬鹿は…あらら死んでいるよレスラーの癖に散弾で死ぬなんて受けるわ…普通は数時間は生きているのに…ショック死かな」
「「「「「反則だーーーっ」」」」」
「俺ちゃんと確認したよ プロレスルールで異議申し立て無しだってプロレスは4カウントまで反則OKなんだ…ルール通りだよ…それじゃ交渉事はリチャード部長任せた…鈴木くん…俺は帰るから車で送って…」
「ああっ…解った」
「はい…直ぐにまわしてきます」
「文句があるなら…殺しちゃうから…じゃぁ~ね…眠い」
良かった、良かったプロレスで…
これで、義手や義足が手に入る…ラッキー。
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