機械化51%
ツナマグロトロ赤身
機械化51%
人は1週間で全ての細胞が入れ替わる〜、なんてのは思春期の子供が哲学チックな知的好奇心を満たす小話だ。
全細胞が入れ替わったとしても、記憶が連続しており自分を自分と認識している以上別物として扱う必要が無い。あくまで「それっぽい話」でしかないのだ。
しかし、そんな錆び付いた話をここ数日聞き続けている。ニュース番組でもバラエティでもアニメでも。内容は「人体を機械化した場合、何パーセントまで機械になっても当人と認めるか」だ。
少し前までは、整形と言って身体(主にコンプレックスの部位)を外科手術によって好きなように整える事があったらしい。
しかし、整形は人体の機械化が流行るに連れて廃れていった。当たり前だ、形を整えるのと整えた上で便利機能がつくのであれば大概の人が後者を選ぶ。
「51%を越えちゃダメでしょ。だって本体が機械じゃん。」
生活ゴミで溢れた部屋に、テレビの音が鳴り響く。
「では事故などによってやむを得ず51%以上を機械化した場合も認めないということですか?」
まだ3分経っていないであろうカップヌードルの蓋を開けて、麺をすする。
「そういった場合は特例を作ればいいじゃないですか、極端な人だなぁ」
まだ若干硬い。もう少し待てばよかった。
「全てのパターンを考えないと意味が無いでしょ。抜け道のある法に意味は無いですよ。」
チラリと、横にころがっていた紙を横目で見た。
前回の機械化手術について詳細が書かれた用紙だ。
そこには大きくハッキリと
「本手術後のトータル機械化率:51%」
と書かれていた。
「構想段階で全てのパターンを考えるなんて無理でしょ、施行後に問題が発生してから柔軟に対応すればいい。」
この人達が何を話そうが、どう転ぼうが、直に僕から人権がなくなるのは殆ど確定だ。特例が出来たところで僕はカウントされないだろうし。
油っこいスープを飲み干す。
体に悪い味がする。
美味しい。
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