第204話 使い古された作戦
さて、今と昔で、ダンジョンの治安は格段に変わった。
これは、冒険者ギルドがきちんと仕事をしているからと言うよりは、冒険者マネジメント会社ができたからと言うのがとても大きな意味合いをもっている。
どう言う事かと言うと、取り締まりが厳しくなったから、ガラの悪い冒険者が減っていったのではなく、根本の所からきちんと冒険者達に教育を施すシステムが作られた事が大きい。
今まで冒険者は、ザックリとしたルールもふんわりとした知識でしか知らず、周りがやっているから自分もやって大丈夫。
と言う様に、ルールよりも、周りの雰囲気であっていいのかダメなのかを決めていた。
車で、法定速度があるにもかかわらず、20キロならオーバーしても大丈夫。
首都高は60キロ制限だが、みんな100キロで走ってるから自分も100キロで走る。
もっと極端に言えば、エスカレーターは歩いてはいけない。が正しいルールだが、片側は歩く人の為に空けておく、空いてなければ咎められるのは片側を塞いでいた人間であったりする事も同じである。
その為、冒険者法は無視されていき、治安が悪化していったのだ。
それを解決するには、きちんとした法律、ルールを理解して守っている人間が大多数にならなければいけない。
その為の冒険者マネジメント会社であり、指導冒険者である。
今の新潟は、冒険者ギルドが試験を行うので一定値の治安は良くなっているものの、冒険者マネジメント会社が教育機関としての役割を果たしていない為に、ダンジョンでの犯罪検挙率は全国でも高かった。
そのダンジョンの一角で、ある少女が仲間を集めて何やら画策をしていた。
ある初心者冒険者を、集団で襲う計画だ。
学校と言う空間は、無法地帯に等しい。
社会人になれば犯罪だと言う事も、いじめ等言葉を変えて咎められるだけで、犯罪に扱われる事は少ない。
子供がやった事と言う謎の主張が罷り通ってしまう。
その意見に毒された人間は、未成年だから許されると言った謎の思想に辿り着く。
彼女達も同じであった。
その為、昔、ヤンキーが対立グループをボコボコにする為に拉致するのと同じ様に、ダンジョン内で仕掛けたのだ。
しかし、一応簡単なルールは某冒険者マネジメント会社でも教えている。
なので、少女達がルールの穴を突いたと自分達で考え出したのが《モンスタートレイン》だ。
勿論、過去に事例もあるし、昔はゲームやマンガでも題材にされていた程に使い古された古典的な犯罪だ。
今聞かないのはみんなが犯罪だと分かっているから口にも出さないだけである。
俗に言う死語だ。
しかし、何も知らない少女達にとっては自分達が編み出した画期的な方法であった。
作戦通り、冒険者免許の通信機能を使ってやり取りすると、ターゲットの少女が作戦地点に辿り着くのを見計らってモンスタートレインを実行する。
各エリアで魔物を挑発して、引き連れて来た魔物達を、ターゲットに押し付けて、少女達は上機嫌にダンジョンから脱出するのであった。
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