海外の一人部屋はちょっとさみしい

「相変わらずアクティブだなあ」


 カレンがホテルの部屋に戻るとちょうど午後3時頃、日本はまだ朝の時間帯だった。


 メッセージアプリで簡単に今日の出来事をまとめて送ると、速攻でアプリの通話着信があって、セイジにはちょっと呆れられた。


「展開が早くて、あたしも流れに乗るのが精一杯だわ……」


 いくら日本語ペラペラのミスター禅がいてくれたとはいえ、やはり多少英語が聴き取れるぐらいの語学力でランクの高い大学の、それも理系の講義に参加するのは結構きつかった。


 一応スマホの録音アプリで講義はすべて録音したし、リライトアプリでテキスト抽出もしてみたが、ここから更に翻訳サービスと辞書検索をして……と考えると気が遠くなってくる。


「でも案外面白かったのよ。講師ともFacebookの友達になったわ!」

「うん、カレンのそういう物怖じしないとこ好きだな、俺」


 もう間もなく出勤で自宅を出るところだったそうで、会話は短めで通話はすぐ終わった。




「ほんと、すごいわよね。会社を首になってからまだ半年も経ってないのに」


 スマホをデスクに置いて充電ケーブルに繋いでから、改めて室内を見た。

 ラグジュアリー……とはいかなかったが、スーペリアクラスのアメリカのホテルのシングルルームだ。

 ちょっと古めのアメリカのドラマで見る家の内装っぽい。


 今回、日本から参加したクラウドファンディング成功者で女性はカレンだけだったので、一人部屋を手配してもらっている。

 他の男性参加者たちは担当者やスタッフらも含めてツインルームや補助ベッドを入れてのトリプルルームだそうだ。


 建物や部屋の内装は古かったが、バスタブのある部屋でアメニティにハイブランドのものが揃っててテンションが上がった。


「セイジ君と海外旅行とかいいかも。あの人物知りだし、一緒だと楽しいのよね」


 今回、急遽決まったカレンの海外ツアーに関しても、必要な現地情報を調べてくれたのはセイジだった。

 何と学生時代の修学旅行さながら、『旅のしおり』まで持ち運びやすいA5サイズの薄いファイルにまとめてくれたときには本当にビックリした。


 とりあえずアメリカでは『夜は絶対出歩くな』と『移動はタクシーを必ず使え』と赤ペンでアンダーラインが念入りに引かれている。


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