第83話公爵家は中立
元義父と絶縁していようとも、王都から離れていようとも、彼らのゴタゴタに巻き込まれる恐れは十分あるため、ぺーゼロット公爵家は中立の立場を取った。取らざるを得ない立場になったと言った方が正しいだろう。
旗色は鮮明にしておいた方がいい、と言う義母の提案だった。
そして、それは後に大当たりする。
王家と大公家との対立が鮮明化する程に中立の立場になる高位貴族が増えたのだ。
義母曰く、「どちらについても家の存続が危ういと感じたのでしょう」とのこと。
それでも大公家所縁の貴族からの勧誘は終わらない。
義姉を狙った輩が公爵領に侵入するたびに対応しているけど、とにかく数が多い。中には移住者を装ってきたりするから質が悪い。
今も数名が捕縛された。
最近、公爵領で商売を始めた一家だ。大公家の子飼いらしい。なにやら言い訳じみた事を喚いているけどそんなことをしても意味ない。
「公爵家を敵に回して五体満足で出られると思ったら大間違いだ」
何故か一同が真っ青な顔になっていく。
女性なんか号泣している。
「泣いた処でどうにもならないよ? こうなる事は覚悟のうえだろう?」
更に泣き喚く。「違う違うそんなつもりじゃない」と首を横に振りながら否定の言葉を放つ。
なら、どんなつもりだ?
危ない橋を渡っている自覚がないのだろうか?
僕にはさっぱり分からない。
中立を「弱腰」「半端者」と勘違いしているアホ貴族は意外に多かった。
何を勘違いしているのか知らないけど、よくもまあ、公爵家に喧嘩を売る様なマネができたものだ。
僕とブリジットが婚約している事を知っていながら釣書を送ってくるし、わざわざ令嬢を公爵領に連れてくる始末。僕だけならまだしも「お姉様の相手は――――」と聞いてもいないのによく口がまわるものだ。
「力があるから中道を貫けるんだ」
僕の言葉に納得する者はいなかった。
中立を貫くことの意味を知らないのだろう。知ろうとしない愚か者も混ざっているのかもしれない。
どちらにも肩入れせずどちらの勢力にも所属しない。ただそれだけのことなのだけど、それがどれだけ大変なことか理解していないようだ。
そんなアホどもはどちらにしても長くは続かない。
無神経で無礼な貴族たちは帰る家を失ったので僕がきちんと住む家と職場を提供してあげた。
皆、泣いて喜んでいた。
善行は為すべきだね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます