第66話王子side
父上から聞いた話では神殿側も大公家の犬に成り下がっているらしい。
ヨハン・フィーデスは神官長の息子。
その彼が大公女と共に学園に編入したのは、大公から何かしら命じられているのではないか、というのが父上の考えだ。恐らく大公女の監視役、もしくは学園の情報を大公に報告する任務を負っているとかだろうとも仰っていた。
『大公が自分の息のかかった人材を教師として送り込もうとしたという情報が入っている。目的は分からないが教師を諜報員代わりに使おうとしていたのだろう。もっともそれ自体は生徒会の役員たちからの反対を受けて頓挫している』
父上の話では生徒会の権限は教師にも劣らないそうだ。それこそ教師以上の発言力があるとすら言われているらしい。特に現生徒会長のミゲル・ぺーゼロット公爵子息は切れ者として名高い。理事や学園長に圧力をかけて無理を通す事もできたがそれをしなかったのは公爵子息に警戒されると踏んだのか、その案は却下となった。
父上曰く、「大公には裏で色々と策を巡らせる狡猾さはあるが実行力はそこまでない。臆病なほどに慎重な性格だ。平民上がりの娘の件にしてもそうだ。娘として引き取ってはいるが『養女』として登録している。実の娘だというのに……。だが、ルーチェ嬢が何か仕出かしたとしても大公家に被害が及ばないようにしているのだろう」とのことだ。
ヨハン・フィーデスは諜報員代わりの役割を命じられている可能性が高いと――
大公女の周りには護衛兼学友が数人いる。
その中で一番頭が回るのがヨハン・フィーデスで、腕が立つのがジョヴァンニ・カストロ侯爵子息だ。カストロ侯爵子息もバカではないが如何せん、性格に難がある。短気過ぎるのだ。先日ついに停学処分を受けた。この分では退学もあり得るだろう。
他の連中は可もなく不可もない取り巻きに過ぎない。
実質、大公女の尻拭いは彼が全て行ってるといっても過言ではないからな。
「ブリジット嬢との交流は難しそうだ。これは一度父上に相談した方が良さそうだ」
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