第41話大公家2

『セニア王国の正当な王家の血はぺーゼロット公爵家が引き継いでいる』


 誰が言い出したのかは定かではない。

 けれど確実に国内外の人々が認識している事だった。


 王家の証である『紫の目』。

 それが王家でも大公家でもなく、ぺーゼロット公爵家にあるためだ。



「現国王陛下は辛うじて薄紫色の目をしているけれど、第一王子殿下はとても綺麗な青い目。亡き王妃様とよく似た青」


 ああ、そういえばそうだ。容姿も母親似だったっけか。だからこそ国王から溺愛されている。

 まあ、惚れ込んで婚約破棄してまで結婚した妻との間の息子。当然と言えば当然なのかもしれないけどこっちはいい迷惑だった。可愛いのは分かるけどまともに育てて欲しかったよ。前回は国王だから色々できなかったのが心残りだ。


「現大公はをしているらしいわ」


「……拘るんだね」


「拘るみたい。馬鹿みたいよね。たかが目の色如きで何が変わるというのかしら? そんな事で王になれるなんて思っている方がおかしいわ」


「ごもっともです」


 義姉上の呆れ具合を見るにつけて、大公家は相当やらかしてるっぽい。


「紫の目を持つ子供に跡目を継がせるなんて馬鹿げたことを公言しているらしくて、老齢にも拘わらず未だに世継ぎを決めかねているという話を聞いたことがあるわ。ブラックジョークかと思っていたけど、どうやら本当らしいわね。大公は自分の歳を考えた事が無いのかしら?ぽっくり逝ってもおかしくないというのに。突然死した場合は間違いなく荒れるでしょうね」


 荒れると簡単に言っているけど血を見る事態になるのでは?


「それでも何でわざわざ市井にいた娘が第一王子の婚約者になっているの?」


 これもイマイチ理解できない。

 大公には大勢の娘や孫娘がいる。外で作って放置していた娘を引き取るよりも孫の誰かを第一王子の婚約者にした方が良いように思うのだけど……。


「まぁ……色々な要因があるでしょうけど、恐らく陛下にまつわる事が原因でしょうね」


「もしかして『国王陛下の魔力低下』が関係ある?」


 これは前の時間軸では考えられなかったことだ。

 何故か、巨大な魔力を有していた国王がその力を失っていた。報告書に書かれていた内容に目が飛び出るほど驚いたよ。どうしたらそんな展開になるんだと。そして、第一王子が大公家と婚約した理由もそこにあった。それと同時に第一王子が立太子できない理由もそれだろう。


「これは極秘情報よ」


「分かってる。学園でも一切話題にでないってところで察するものがあるから」


「ふふっ。国王陛下が直々に箝口令を引いているくらいですものね。極少数しか知らされてないはずよ。知っているのは陛下の側近、宰相、大公、後は宮廷魔術達と侍医……それぐらいじゃないかしら?」


「一応、身内だけが知っているってところか」


「大公の場合、別ルートで知った可能性はあるでしょうけどね」


 これは大公家が王家にスパイを放っている可能性が大きいな。王宮にスパイって……いや、公爵家も人の事を言えないのかもしれない。だって、ここまで調査できるって普通はあり得ないから。


 



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