第75話 大健闘!
激しく翼を羽ばたかせ、炎を吹き飛ばした鷹は、眼下のディノとイーザンに目をやると、突っ込んで来るのかと思いきや、旋回しながら上空へと舞い上がった。そしてそのまま物凄い速度で旋回する。すると旋回に合わせるように、徐々に風が巻き起こっていく。竜巻のように砂を巻き上げながら激しい風が吹きすさぶ。
ディノとイーザンは背後に大きく飛び退き、竜巻から逃れる。しかしその竜巻に向かって鷹は嘴を大きく開けたかと思うと炎を吐き出した!
炎は竜巻に吸い取られるように絡め取られ、一瞬のうちに炎竜巻に!
「ディノ!! イーザン!!」
二人に砂と炎の竜巻が近付いていく。
イーザンは雷撃を飛ばすが、炎竜巻に吸収されていく。竜巻の背後から急に姿を現した鷹はディノとイーザンのすぐ傍まで迫り、再び嘴を開いた。
「ちっ、面倒なやつだな!」
ディノが舌打ちしながら、突っ込んで来る鷹に剣を構えた。そしてディノが剣を振りかぶり、鷹が炎を吐き出した瞬間、ディノも大きく剣を振り下ろす。
「はぁぁああああ!!」
振り下ろされたディノの剣筋からは激しい風圧なのか剣気と言われるものなのか、斬り裂くような風が砂を抉るように地面を割ったかと思うと、吐き出された炎をも真っ二つにしていた。
「す、凄い……」
その激しい風圧はディノに向かって飛んで来ていた鷹の翼をも斬り裂いた。
『ギュァァァァアア!!!!』
片翼が斬り裂かれバランスを崩すが、必死に体勢を整えようともがく。そこへすかさずイーザンは雷撃を纏わせた炎弾を撃ち込んだ。体勢を整えようとしていた鷹は横倒しに地面へと落ち、そこへ大きく跳躍したディノは上空から鷹の腹に剣を突き立てた。叫び声を上げながら暴れ回る鷹は、ディノの剣が鍔の部分まで刺し込まれると動きを止めた。完全に動かなくなったことを確認すると、ディノは剣を勢いく良く引き抜き、こちらに向かって叫んだ。
「ルーサ!! 魔石!!」
二人の戦いぶりに見惚れてはいたものの、今回はちゃんと待機してましたよ! 倒されたと分かった瞬間、私は近くまで飛び出ていた。
意識を集中させ、魔石を結晶化していく。鷹の魔獣の血は見事な真紅の綺麗な魔石となった。
結晶化を終え、私がへたりこんでいると、イーザンは少し小さくはなったがいまだ渦巻いている炎竜巻に向かって、なにやら呟き魔法を発動させていた。どうやら先程私を助けてくれた風、あれはやっぱりイーザンの風魔法だったのね。
イーザンが魔法を発動させると、竜巻ほどではないにしろ、風が巻き起こり竜巻の動きを止めた。そして良いのか悪いのか……、竜巻とイーザンの風魔法がなにやら反発しあったのか……大きな爆発を巻き起こした……。
激しい風が襲い、ゴーグルをしていても思わず顔を庇う。マントが吹き飛ばされそうなほど風に激しく煽られる。ディノも同様に顔を庇い踏ん張っている。イーザンは!? 竜巻のすぐ近くにいたはず!
慌ててイーザンの姿を探すと、風に服や髪は煽られているが、平然と立っている。ん?
しばらくすると風もおさまってきた。ホッと身体の力を抜くと、ディノが駆け寄って来た。
「大丈夫か?」
腕を掴み立ち上がらせてくれた。
「うん、私は大丈夫。イーザンはあんなに竜巻に近かったのに大丈夫なの?」
「あー、あいつは障壁結界も張れるからな。大丈夫だろ」
「障壁結界……」
凄いわね、イーザンが強い理由がこの戦いで分かった気がする。
ディノと二人でイーザンの元まで近付くと、何事もなかったかのように振り向いた。
「よ、おつかれ」
「無理矢理な方法になってすまないな」
イーザンは少しだけ申し訳なさそうな顔をした。
「あの勢いの竜巻を消すには私にはあの方法しか無理だった」
「いやいや! イーザンが謝る必要なんてないでしょ! 助けてくれてありがとう。ディノも」
ディノはニッと笑い、イーザンは少しだけ表情が和らいだ。
「ちなみにあの竜巻を消す方法って他にもなんかあるのか?」
「私には無理だが、大地系の魔法を使える奴ならあの竜巻全体を覆う障壁が作れたかもしれない」
「なるほど、大地系なぁ」
イーザンとディノはさすが戦闘に特化しているだけあるな、という会話を繰り広げていた。私には分かるような分からないような話をただ横で聞いていると、ひょっこりと私のマントの下からルギニアスが顔を出す。
「お前、もう今日は限界だろ。帰るぞ」
「ルーちゃん」
「おっと、すまん、話し込んでたな。魔石採取は精々二個くらいって言ってたよな。そろそろ撤収するか。今回二個採取出来たのは健闘したほうじゃないか?」
ニッと笑って私の頭にポンと手を置いたディノ。
「そうだね、予期せぬ魔獣からの魔石も採取出来たし、独り立ち一発目にしては大健闘かも! 二人ともありがとう!」
「「あぁ」」
ディノはニッと笑い、イーザンも少しの笑顔が見えた。
魔力回復薬を飲み、魔力自体は回復したものの、魔獣や魔蟲からの魔石採取は集中力や精神力も伴うからなかなかたくさんは採取出来ないのが難点なのよね。
基本的に作業場で精製魔石を創るのですら、半端ない集中力が必要だ。それを戦いのなか集中力を発揮させないといけない訳だから仕方ないんだけどね……。
すっかり昼食を取る機会を失ってしまっていたため、遅めの昼食がてら携帯食を齧り、少しの休憩をした後、ランバナスへと戻るため、再び砂漠を歩いたのだった。
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