君の名前は大谷翔平。

 朝の空気は冷えていた。テレビもネットも結婚の話。大谷翔平結婚。皆が祝福している。その影響は少なからずあったのか、昼にはポカポカとしたお天気になった。窓から入る、心地よい穏やかな暖かさが私の心身を包み、微睡む。窓から差し込む日差しが、太陽の匂いたっぷりの上等な掛布団になる。


忘れてしまう……無職のこと。このまま……無職であることを忘れてしまいたい。大谷よりも年上。涙はでない。10年以上引きこもっていたからより深刻で……。でも、この社会は申告敬遠は無かった。NPOの助けもあり、労働条件を思案しなければ、ありがたいことにすぐに雇ってもらえた。去年、家を飛び出した。

だけど……。

 帰ってきてしまった……。役立たずだった。引きこもりのような生活を再びしている。


 暫くして、目を覚まさせるような冷たいが風が吹き込み、大谷翔平が1000億円の契約をしたことを思い出した。その契約年数は10年。わが家が倒壊すると告げられた年数と重なる。どちらも去年の話。向こうは契約、こちらは宣告。

 

おめでとう。悔しくて。悲しくって。自分が惨めで選手ってつけなかったけど……。

大谷翔平選手。ご結婚おめでとうございます。


観客席にはつかないとな。と、思うだけは思う。



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