140字小説集・風刺系

藤崎 柚葉

誰か、僕らの夏を返してください

 白球を追いかけ、仲間と共に汗を流した日々。この夏が僕にとっても最後の夏だ。

 予選試合前、監督から激励の言葉がある……はずだった。


「学校関係者から陽性者が出た。お前らの出場はできん」


 僕らが何をしたって言うんだ。みんな元気だと言うのに。

 すまん、と頭を下げた監督よりも先に僕は涙した。

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