星空の下

 日が暮れると、ステラは木の枝で火を起こした。

 夜の間は、火があった方が野宿は安全なんだって。

 ……何度も言うけど、これが王子様の生活とは思えないなぁ。とほほ。

 パチパチ。

 人が拍手しているみたいな火の音。

 オレンジ色の光を、二人で並んで見ていた。

 ステラと出会って、修行をして。もう三日経つんだ。何だかあっという間だな。

 私が「元の世界に戻る方法」については収穫ナシ。そもそも森の中じゃ、探せるわけないよね。こんな森の奥じゃあ人にも会わないし……。


『……ステラ?』


 ステラが空を見上げてる。何を見てるんだろう。


「星を見てたんだ」

『へぇ……うわ、きれい!!!!』


 自然と声が大きくなった。

 だって紺色の空には、満天の星空!! 木の葉っぱが空を少し隠してるけど、それでもたくさんの星があるって分かるよ。


「カナタの住んでいた世界に、星はなかった?」

『ううん、あった!! でもこんなにたくさんは見えない』


 街の光があるからね。明るさの強い星じゃないと、私たちの目には見えないんだって。

 ステラは微笑む。


「見つけたね、僕たちの世界の共通点」

『そうだね。今まで全く違うことばっかりだったもん』


 そっか。この夜にきらめくものは地球にもミラクリウ王国にもあって。どちらも同じ「星」って名前がついてるんだ。

 そう思うと、すっと心が軽くなって、安心するね。


『あっ、みてみて流れ星!? うそでしょ!?』

「あはは、あれは夜行性のドラゴンのシッポだよ。カナタ」

『ドラゴン!?!?』


 ……前言撤回。夜の空も違う気がしてきたわ。

 へぇ。でもこの世界には光るドラゴンがいるんだ。きれいだなぁ。

 ちらり。ステラの横顔を見る。その目がすごく穏やかで、何だかどきどきしちゃった。すごく、やさしい目だ。


『……星、好きなの?』

「うん。好きだよ」


 ステラがゆっくりうなずく。


「一人の夜は、星を見上げてたからかな……ずっと僕のそばにいてくれている気がするんだ。お父様とお母様はいつも王としての仕事で忙しいし……ほら、僕は弱いから、兄や姉も中々僕に会ってくれなくて」

『ひどいね』

「仕方ないよ。……落ちこんでも、星を見ていたら自然とさみしくなかった。星座を調べて、神話を読んだりして。そんな時は、夜でも明るかった」


 夜でも明るい……か。

 素敵だな。


「でも、今日はもっとさみしくないかも」

『?』

「カナタがいるから」

『えっ』


 心臓がドキッと高鳴った。

 いや、ま、まぁそうだけど……何だろう。すごく照れる……。



「グオォォォォォォォォォ!!!!」



 えっ、何!?

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