第8話 ツンデレ幼馴染の襲来
「なぁ正也、どっか帰り遊んでこーぜ」
「あぁ」
それから緩やかに時は過ぎ、ホームルームが終わり現在は放課後。教室の自分の席に座っていた俺は鞄に教科書やら筆記用具を詰め込みながら帰る準備を進める。ホームルームが終わったばかりなのでまだ教室にはクラスメイトがほぼほぼ残っているが、しばらくしたら誰もいなくなるだろう。
どの部活にも所属してないので、俺や智樹は帰宅部だ。部活に入るのは強制ではないので、自分の時間を有意義に消費したい俺にとっては大変ありがたい。
それにしても。
(結局、高槻さんはあれから一度もアクションを起こしてないな……)
ちらりと真ん中辺りの席を見ると、高槻さんは他のクラスメイトに囲まれながら談笑をしていた。その表情は今朝に比べるとよっぽど落ち着いており、固かった笑みも幾分かマシになっていた。
昼休みに高槻さんが俺と会話したことがきっかけで吹っ切れたのか、それとも見切りをつけたのかどうかは知らないが、やはり俺は所詮罰ゲームの嘘コクの対象に選ばれたただの一般生徒だったようだ。
誤解だのなんだの言っていたが、それはきっと俺が彼女に嘘コクされたと学校の生徒に言い触らさないように心象を良くしようとした結果だったのだろう。まぁ俺としては元からそんなことをする気は毛頭ないので、わざわざご苦労様としか言いようがないが。
何はともあれ、これで彼女からのちらちらとした視線は落ち着いたのだ。今後は普段通り授業に集中出来るのでよしとしよう。
「それでどこに行く? この前はゲーセンに行ったから、今日はカラオケにでも行くか?」
「んー、そうだな……」
そのように前の席から話し掛けてくる智樹だったが、次の瞬間教室の扉が勢い良く開かれた。教室に響く程だったので俺は思わずその方向へと視線を向けると———ピシリと身体が固まった。
「えっ!?」
「なんで彼女がここに?」
「誰かに用事でもあるのかな?」
隣のクラスに在籍している彼女が教室に姿を現すと、残っていたクラスメイトは驚愕や戸惑いといった表情を見せる。それもその筈、同級生ではあるもののこれまで彼女がこの教室に訪れたことは一度もない。そんな彼女がいったい何故この教室にやってきたのか、みんな疑問なのだろう。
一方の俺はといえば、顔を引き攣らせながら彼女を凝視していた。
(どうしてお前がこの教室に来るんだよ……!?)
すると、少女は誰かを探すようにして教室をぐるりと見渡す。頭が真っ白になっていた俺は咄嗟に顔を背けようとするも時既に遅し。思い切り視線が合ってしまった。
艶やかなツインテールを靡かせた彼女は俺の席まで淀みなく歩みを進めるとその隣に立つ。やがて席に座った俺を見下ろした彼女は綺麗な唇を開いた。
「———正也、私と一緒に帰るわよ」
「「「「「え、えぇぇぇぇぇぇっっっっっ!!!!!!!!」」」」」
その可愛さと強さから『
「は、はは……」
教室に響き渡るクラスメイトの驚愕をよそに、額に冷や汗を浮かべた俺は乾いた声を洩らすしかなかった。
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