第2話
日が暮れて辺りが暗くなり始めた時、終業の鐘の音が響き渡る。蓮花はきりのいいところまで作業を終えると帰る準備を始めた。
「お疲れ様、蓮花」
「お疲れ様でした」
周りの人がどんどんと少なくなる中、蓮花も同僚の女性に声を掛け帰路に着いた。もちろん楊から貰った大根はしっかり包んでいる。大根なら小さな弟妹も好んで食べれられる野菜なので食卓にも並べやすい。
蓮花は5人姉弟の長女なのでまだ下に4人の弟妹がいる。比較的歳の近い十五歳の弟、
しかし下の二人――九歳の
そんな弟妹だが大根は喜んで食べてくれる数少ない野菜なので楊のおかげで今夜のおかずは頭を悩ませないで良さそうだ。蓮花は足取り軽く家の門をくぐった。
「ただいま帰りました」
「おかえりなさい、蓮花」
帰宅した蓮花を迎えたのは母親の
「あらあら、大きな包み。何かしら」
「大根よ。楊さんに持って帰っていいって言ってもらえたからおかずにと思って」
「まあ! それは助かるわ。さあ、手を洗いなさいな」
蓮花と共に台所に向かい夕飯の支度を始める。本来であれば使用人がいてもおかしくないのだが雇える余裕は今の柳家にはない。自分のことは自分でというのが両親の教育方針である。
「主菜にして大根餅にしましょうか」
「私もそれがいいと思っていたの」
大根餅は一般家庭でよく食べられるもので、大根を
せっせと作業を進め台所がいい匂いでいっぱいになってくる。するとタタタッとこちらに近づく足音が聞こえてきた。
「いい匂いがする!」
「お鼻がいいわね、玲玲」
「姉様おかえりなさい!」
ニコッと満面の笑顔の妹を見て蓮花は癒される。時に厳しく叱ることはあっても、やはり可愛い妹には甘くなってしまう。
「ただいま、玲玲。そろそろ用意が終わるからみんなに声を掛けて呼んできてくれるかしら?」
「任せて!」
来た時と同様タタタッと背を向ける玲玲に母と顔を合わせ笑う蓮花だった。
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