29話 季節外れのサンタクロース
次の日。
リョウは難しい顔をしていた。
「どしたのリョウ?かなり変な顔してるけど」
それに対してはサリーがしっかり反応していた。
「朝起きたら枕元に俺宛の手紙と装備一式が置いてあったんだ」
うん、私が置いた。ちゃんと見つけたみたいでよかった。
「えーー!?なにそれいいなあ!私にも見せてよ」
「まあ、もちろん。それにそれだけじゃないんだ・・・・・・。なんか日誌みたいのもあったんだがその中身がちょっと、な」
「なにそれ、突然現れた謎の日誌と装備一式?そんなわくわくする展開羨ましいんだけど。勇者補正?私にも分けなさい」
「なんだ?勇者補正って。あー、とりあえず飯食わね?話はそれからでも」
リョウがそう言うから急いで朝食を終え、部屋へ集まった。
「さあ、その謎の一式を見せなさい!!」
サリーが掴みかかる勢いでリョウに言った。
ご飯食べてる時もめっちゃそわそわしてたし、むしろ今までよく我慢してたなってくらいだった。
「そ、そんな慌てなくても見せるから落ち着けって」
リョウはそう言いながらベットの上に置いていた箱を持ってきた。
中には言っていたとおり装備とメモと日誌、つまり昨夜私が置いていったものが入っていた。
「それでこれが問題の日誌?中見てもいい?」
サリーがそう言いながら日誌を手に取った。そしてリョウの返事も聞かずそれを開いた。許可とった意味とは。
「なにこれ白紙じゃん」
サリーはそれをぺらぺら捲りながら言った。
私が開いたとき同様、サリーの目にも何も書かれていない白紙のページが見えているみたいだ。
「なんかこっちのメモには他の人に読めないようにしてるって書いてあったんだ。本当にそう見えるのか?」
「私にも白紙にしか見えないな。何が書いてあるの?」
サリーの後ろからのぞき込んだフリをしながら私もそう言う。
「要約すると、俺が勇者として召喚されて、魔王を倒して、その後魔王になった俺が次の勇者に倒されるまでの日誌だった」
ふむふむ。さらっと言ったがなかなかにぶっ飛んだ内容。
……この宿防音とか大丈夫かな?一応結界とか張っとく?割とセンシティブな話になりそう。
そういえば私たちが勇者一行()であることすらまだ周りに知られていないんだった。勇者とか魔王とかそういう単語が漏れ聞こえるだけでも良くないかもしれない。
勇者ってだけで注目されてしまうから。
そうと決めたらサクッと防音結界を張る。特に難しい事じゃないし、まだ魔法に慣れていないふたりには、この程度気付かれないだろう。
張った後ちらっとふたりを見て、全く気付いていないのは確認できた。
「闇落ちしたってこと?つまり未来のリョウが過去のリョウに送ったものが今届いたってこと?
そして同じ過ちを繰り返さないようにする為にこれを届けたとか?」
サリーは飲み込みが速かった。流石ラノベ好きなだけはある。
「そうなる、のかな?俺もまだ混乱してる。それに、気になることがあってさ」
リョウはそこで言葉を切って日誌を捲り、あるページで止めた。
「ここから先、読めないんだ」
そう示されても私には白紙にしか見えない。
「ここからって言われても私には全部真っ白にしか見えないよ」
同じ立場のサリーが私の分も代弁してくれた。
「そうだった」
素で忘れていたみたいだ。
それにしても、本人にも読めないページがあるのは予想外だった。考えられるのは、現状のレベルで知ると良くない情報が含まれているとかそんなことだろうか。私だったらどんなものでも、例えミスリード誘発するようなものでも情報は欲しいけれど。正誤は見てから吟味すればいいのだし。
そんなことを考えているうちに話は進み、手記の詳細に入っていた。
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