第84話 他の大陸?女神隊集合1
神界の新しい派閥らしきものを作って一か月、出産ラッシュから二か月を過ぎて、季節は初夏になっていた。
初夏と言っても、この国の気候は日本の軽井沢あたりに近いので寒い日もあるのだが、陽射しはすっかり夏そのものだ。嫁達は、少しずつ動けるようになって、ちらほら談話コーナーにも出てくるようになった。神界の派閥らしきものを作ったせいもあって、女神アリスも良く遊びに来ている。
そんなある日、夕食後の談話コーナーで寛いでいたら、ふとアリスが言った。
「ところでリュウジ、他の大陸はどうするの?」
「うん? 他の大陸って、何のこと?」
一瞬、俺は反応に困った。何のことだ?
「だから、他の大陸にも特効薬を配るんじゃないの?」
全く予想外のことを言われた俺は戸惑った。
「え~っと、もしかして、この大陸以外にも、別の大陸があるんでしょうか」
「ありますとも」
「知りませんとも」
「何で知らないのよ」
いや、まったく頭の中から抜けていた。
早速、俺は千里眼を思いっきりズームアウトしてみた。
てか、千里眼がバージョンがアップしてて「神眼」とかいうものになっていた。
とても視野が広くて驚いた。望遠鏡から双眼鏡になったくらい違う。千里眼が見づらいから見なかったんんだろうか? 初めから神眼だったら見ていたかもしれない。
これは千里眼の仕様の問題だな。うん、そうに違いない。
それはともかく、大陸は確かにあった。そういや、なんで見ようとしなかったのか不思議だ。千里眼でも意識すれば見れたはずだ。なぜだかこの大陸だけだと思い込んでいた。
「いや、俺は見てないぞ。見てないなら、無いのと一緒だ」
「ばっちり見えたわよ。しかも二度見してたわよ」とアリス。
俺が見たものはアリスも見れるからな。
「ストーカー禁止!」
「ストーカーって何よ」
「第一神様がアリスを同列神にするって言った時、全力で断るべきだった」
「もう、遅いわよん」なにその得意そうな顔。
「この大陸だけじゃ、だめだよな?」
「それだと、この世界の四割くらいね」半分以下かよ。
「あれ? この世界をちょっと発展させればいいんじゃなかったっけ?」
「違うでしょ。そのミッションは終わってるの。今は、十年後の審査が目標でしょ?」
「そうだった」
「そうなのよ」
「そうか。なんか細長い大陸と、あと群島みたいなのがあるな」俺は「神眼」でグリグリと視点を移動させながら言った。
この星は、俺たちのいる大陸が一番大きく、その周りには大海が広がっていた。
そして遥かに海を隔てたところに別の大陸があり、別の島々もあった。つまり、それぞれが遠く離れているのだ。見つけにくい筈だ。
「そうそう。それよ」
知ってしまうと、ちょっと興味が出てきた。同じ大陸でも、形が違えば気候も大きく違うだろうし、そうなると文化もかなり違っているのかも知れない。
「そうか。他の大陸にも行ってみるか。とりあえず、この大陸は現状維持かな」
「そうね。やり過ぎは禁物だからいんじゃない?」
「まぁ、もう十分やり過ぎてると思うけど」
「新しい大陸は、付き合い方を考えたほうがいいかもね」とアリス。
そんなこと言われてもなぁ、俺にそんな器用な事ができるかなぁ?
「ううん。まぁ、距離もあるし俺達にも限界はある。なるべく浅い付き合いに留めるか。あっ」
そこで、ちょっと思い付いた。
それを聞いてたニーナが小声で言う。
「ちょっ、リュウジがまた何か変なこと思い付いてるよきっと」
「あら、流石に気付くの早いわね。でも、今のは確かに」とアリス。
「うん、あれは絶対何か思い付いたかんじ~っ」とミルル。
「ええ、わたしも分かる様になってきました。きっとそうですね」とセシル。
「そうね、今度はどんなことを思いついたんでしょうか?」とセレーネ。
「姉さま、それが分かるくらいなら苦労しませんわ」とアルテミス。
「ほほぉ、確かにのぉ」とリリー。
「その伝言ゲームみたいなの流行りなのか?」
とりあえず最後のリリーに突っ込む俺。
「んがっ」
「こほん。ではリュウジ。正直に言ってちょうだい? 今、何か悪だくみしたでしょ?」
ニーナ開き直ってるし。悪だくみって。
「何だよ人聞き悪いなぁ。別に変なことじゃないし悪くもないよ。ただ……」
「ちょっとまって、女神様集合!」とニーナ。
ぽっ ぽっ ぽっ
イリス様、ウリス様、エリス様が登場。
「なにそれ? 新しい技?」
いくら眷属になったからって、ちょっと軽くないですか? ま、全員じゃないけど。
「はい、いいよ。リュウジのトンデモ話を聞く会」
なにそれ。てか、ニーナが会長なのか?
「お前らなぁ。だから、何でもないよ。普通だから」
「どうせ神界から覗いてるし同じよ。はい、普通の話をどうぞ」とアリス。
「いや、だから。無害化魔法共生菌の配布は別に彼方此方いかなくても配布できるよって話だよ」
「なんで、彼方此方いかないで配布できるのよ」とアリス。
「いや、だから転移させたら早いかなって」
「え? それって、リュウジが配って歩くってこと? ご苦労様」
「違うって。 無害化魔法共生菌だけを転移で雲に撒くとかすれば、いいだろ?」
「「「「「「「「お~~~~~~っ」」」」」」」」
「なにが、お~っ、だよ。普通だよ」
「転移が使える神としてはね。でも神界から撒くの?」とニーナ。
「いや、神界経由して撒こうかと」
「でも、それって許可下りるかしら? 神界にもばら撒いちゃうじゃない?」とアリス。
「うん。それなんだけど、完全に閉じた転移ボックスみたいな物を神界に置かせて貰って、その中だけを転移に使うってこと出来ないかな? 神界に影響ないから、いいと思ったんだけど」
「「「「「「「「なるほどっ!」」」」」」」」なんでハモってんの?
「そういう仕組みなら、可能かしら?」
イリス様も期待した顔で言った。
「そこが俺には分からん。神魔フォンの基地局の時みたいに言えるのかどうか?」
ぽっ ぽっ ぽっ ぽっ
女神オリス、女神カリス、女神キリス、女神クリスも登場。
「やっぱり、聞いておくほうが良さそうなので来ました」と女神オリス。
「あ、確かにオリスさんに関係しますね」
なんだ、結局聞いてるのなら全員集合でよかったな。
女神クリス、女神オリスがいるなら話は早いし。
「菌の入った液体をそのまま散布しても大丈夫でしょうか?」
「もちろん大丈夫。危険な成分は入ってないから、雨雲に散布してもいいよ。原っぱに撒いても大丈夫」
開発に関与した薬の女神クリスの話なので安心していいだろう。
「リュウジさんだけじゃなくて、使徒も散布したいってことですよね?」と女神キリス。
「うん、そうしたい」
「神道具で散布するなら専用ボックス経由は可能だと思います。千里眼で散布ポイントを指定するようにしましょう」
さすが神魔道具の女神キリス、即答ですか。
「それいいですね!」
「じゃ、散布用の神道具は任せてください」と頼もしい女神キリス。
「良かったっ。よろしくお願いします」
「ふふ、了解です」
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