哀しさを誤魔化す君へ

ベストなタイミングで提供されてくる料理を食べながら会話をする。

どうやら彼は口数が多くはなさそうだ。でも一生懸命話題を膨らませようとしてくれているのが伝わる。

話題の中心は次第にしろくろさんを保護した経緯になった。


うん?あれ?なんか引っかかるな。

そう言えばこのご時世に事故なんて珍しいって思った記憶が有る。時系列的にも彼がデリバリーを休み出したころのような。


もしかして、、、

記憶を頼りにガードレールとカーブミラーがこんにちはしていた場所を言ってみる。

ああ、そうですそうです。良く知ってらっしゃいますね。そこですそこです。いやはは。

他人事で流してしまったいたことがこんな形で繋がるなんて驚いた。

いい話し。いい話しなんだけど、もしもが有った可能性を考えるとゾッとした。

万が一が有ったかもしれないんですよ。笑い事じゃないです。

あはは、すみません。その通りですよね。

彼は酔って柔らかくなった表情で言ったが、途端真面目な顔になって続けた。

でも少しも後悔はしてません。あの時の僕に、ああする以外の選択肢は有りません。

強い意志を感じた。けれども悲しくもなった。

自分を蔑ろにしている感じが読み取れた。

会話は進み、私のこれまでなんかを話した。学生時代の事だったり、就職してからだったり。

流れ的に彼のターンになる。少し思案してる様子だった。

うーん、そうですねえ、、、

彼のこれまでを聞いた。少し言い淀んでいた理由が分かった。酔っているからガードが緩くなっていたのだろうな。

でもそれ以上に気になったのは、それらの話しを彼はずっとニコニコ笑いながら話していたことだった。

なんでそんな辛い話しを笑って話せるの。それこそ今日一番の笑顔かもしれない。あはは、とか、えへへ、なんて笑ってられるはず無い。思い出すのも辛いはずなのに、言葉にすることがどれだけ辛いか。胸がキューッと締め付けられた。

彼が背負い込んで来た沢山の物が、今の素敵な彼と、悲しい彼を作ったのだと知った。

笑わなくて良いよ。大丈夫だよ。怖くないよ。

そう言ってあげたかった。

でも相槌を打つことしたか出来なかった。

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