首をもたげる君へ
人間一人、猫一匹の共同生活が始まった。
君はまだまだおっかなびっくり狭い所で小さくなっている時間が多い。たまに部屋の物をじっと見つめては、首を傾げてからのフックパンチをお見舞いする。
いわゆる猫パンチと言うやつだ。名前の響きとは反して意外と力強い。爪が合わさるのだからもはや凶器だ。
爪の出し入れのコントロールは成長と共に上手になるらしいのだが、親兄弟と一緒に育っていないと喧嘩をしないから、加減を知らないまま大人になってしまう事も有るそうだ。
君はコントロール下手くそになりそうだね。
すでに傷だらけの手の甲を眺めながら、頭を撫でようと手を伸ばす、すかさず猫パンチ。
ほうらね。
キャットフードはふやかさずカリカリのままで良いですよと言われた。仔猫の離乳食はフヤフヤにふやかしてあげるものらしいのだが、迎えに行くのが遅くなってしまったのですでに普通食になっていた。しかし勝手が分からず色々なキャットフードを買ってしまったので、取り敢えず代わる代わるあげてみたのだが、これが良く無かった。少し値が張るキャットフードと、比較的安価なキャットフードでは食いつきが全く違う。食べてくれない訳では無いので安心したが、仔猫の内に覚えさせるべきでは無かった。無知を後悔した。
ずっと、君、と無意識に呼んでいたのだが、それでは可哀想と言われてしまった。
名前を思案する。
しかし中々どうしてこれが難しい。
名付けると言う事を自分がするなんて、想像もしていなかった。候補が浮かんで来ない。
君の真似をして、じっと見つめてから首を傾げてみた。
君は、白と黒のぶち模様だから、しろくろ。
しろくろはどうかな。
君はお返しとばかりに首を傾げて、んー、とないた。
よし、しろくろさん。これからずっとよろしくね。
んー、と返事は返って来なかった。
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