風を揺らす君へ
休日。
仕事の日と同じ時間にアラームが鳴る。設定が面倒なので365日欠かさず同じ時間に起こしてくれる相棒を手探りで探す、タッチとスワイプ、見なくても止められる。
少し布団の中でモゾモゾしながら今日はネイルサロンの予約日だったな、と思う。
自分で作った予定のくせに、いざ当日になると無性に面倒になってしまうのは私だけだろうか。行ってしまえば何てこと無いのに、事前段階がたまらなく億劫だ。
天の邪鬼、へそ曲がり、気分屋、わがまま、どれも違うんだよな。
ただの面倒くさがりか。
そんなことを考えながら、足を上げ反動をつけて一気に起き上がる。これをしないと一時間でも二時間でもグダグダしてしまう。顔を洗い、歯を磨きながら良く行くコーヒーショップの混雑状況を 確認する為に、アプリのアイコンをクリックする。
うへえ。
本当に休日ってどこもかしこも混んでるな。やだやだ辞めた。
仕方がないのでマシーンのスイッチを入れ機械を温める。コーヒーには少しこだわっているので自分でいくらでも淹れれるのだが、人に淹れてもらったコーヒーが一番美味しく感じる。これも面倒くさい私の性格の一つだな、なんて思いながら。朝起きたら誰か淹れてくれる人が居れば良いのに。とこぼした。自分で言ったくせに寂しくなってため息が出た。
支度を済ませて、指を三回鳴らす。この動作をすると電気やガスの元栓がオフになる様に設定してある。音に反応するのか動作自体に意味があるのか詳しくは全く知らない。ユーザーなんてこんなもの。
陽射しが気持ち良い外に出て、寝起きとは打って変わって気分が良くなった足取りで街を闊歩する。おしゃれして、ネイルサロンに行って、カフェでランチ、文章にしたらなんかオシャレ上級者っぽいよね。なんて自己暗示を掛けると自然と背筋が伸びる。単純な奴。
道中にガードレールとカーブミラーが私の方にこんにちはしている場所があった。前通った時は違ったから最近事故があったのかな。しかもそこそこ大きな感じだな。このご時世に事故なんて珍しい、事故率がかなり下がって保険会社はあの手この手を繰り出して生き残り競争をしているとかしていないとか。結局良く知らないことをふわふわと考えながら通り過ぎた。
予約時間に微妙に遅刻しそうで、パンプスが地面を鳴らす音が早くなった。
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